ケース3

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 ASDの人はこのほか、変化に弱い、聴覚などの感覚が生活に支障をきたすほど過敏といった特性もある。表面化するこれらの特性は千差万別なうえ、ADHDなどほかの発達障害と併発する人も多い。

「たとえ医師から発達障害とは断定できない(グレーゾーン)と診断されても、お互いコミュニケーションをとるのが難しいと感じたら、“これがこの人の脳の特性”と考え、対応することが大切です」

 発達障害は病気ではない。脳の発達が通常より遅いことなどが原因で起こる“特性”だ。本人と周りの人が適切に対応して経験を重ねれば、状況は改善できる可能性もある。

 では、こうした特性を理解するために具体的な例を紹介しよう。

●汚部屋になっても片づけられない

「ADHDの人は、何かしていても別のことに気を取られ、片づけたいと思っても、完遂しにくい傾向にあります。ASDの特性を併発している場合、何を捨てるべきか判断できない場合も。また雑然としていても、自分なりのルールがあったりもします。周囲の人が分類と処分を一緒に行い、1日1か所でいいので片づける習慣をつけさせること、片づけた状態をキープさせることが大切です」

●後先を考えずに衝動買い

 新しいものなどの“刺激”に惹かれ、興味や関心が移りやすいのもADHDの特性だ。

「衝動買いをしてすぐに飽きるので、周りは好奇心旺盛な新しいもの好きと捉えがちですが、本人としては刺激に逆らうのが難しいのです。破産の可能性もあるため、家族が家計の管理を。クレジットカードやスマホの決済アプリ利用時に慎重を期したり、買い物のルールを決めるなどで対策を」

●ささいなことで怒り出して止まらない

 ADHDの人は感情の制御が苦手な傾向があり、喜怒哀楽を瞬間的に爆発させてしまいがちだ。

「“普通はそうだからやる”という“普通”が理解できず、イライラしたり、瞬間的に怒りを爆発させてしまうことがあります。こういうケースで感情的に返すと互いに消耗するだけ。瞬間的な怒りはすぐに収まることも多いので、穏やかに対応してください。理解を示して、非があれば謝り、事情や考えを論理的に話すと納得してもらえる場合も多いです。怒りが激しい場合は、落ち着くまでやり過ごすのも手です」

●空気を読めず、失礼なことを言う

 ASDの人は、物事を論理的に考え、自分の理屈にこだわって行動する傾向があり、周りから見たら協調性がないと見られることも。

「自分の中のルール以外のことは理解しづらいだけで、周りとけんかしたいわけでも反抗したいわけでもありません。とはいえ、自分が正しいと思っているので、無理強いするとこじれることも。穏やかな態度で“あなたの考えもわかるけれど、こうも考えられないかな”と共感しつつ、論理的に話すのがおすすめです」

ケース4

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【プロフィール】
精神科医・岩瀬利郎さん/東京国際大学医療健康学部准教授、日本医療科学大学兼任教授。共著に『心理教科書 公認心理士 完全合格テキスト』(翔泳社)などがある。

取材・文/前川亜紀 イラスト/たばやん

※女性セブン2023年3月30日・4月6日号

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