「新原氏は安倍政権では重用されたが、菅政権では干されたのです。ですから、自身を冷遇した菅政権への意趣返しで菅氏に近いアトキンソンをバッサリ切り、新しい資本主義実現会議に十倉氏を入れるように進言したのです。岸田首相がいくら“分配”を強調しても、経団連という最強のロビー団体の会長をメンバーに入れたということは、大企業優遇の方針が岸田政権でも続くということを示しています」(官邸関係者)
新原氏は「新しい資本主義実現本部事務局」では事務局長代理という要職に就いた。事務局の組織ではナンバー3のポジションだが、事務局長(栗生俊一・官房副長官)と事務局長代理(藤井健志・官房副長官補)はいずれも兼務であり、事実上のトップとして仕切っているのが新原氏なのだ。内閣官房で新原氏は新しい“官邸官僚”として権勢を振るい、「事務次官より偉い」(経産省関係者)との評を得るまでになっている。
新原氏については、前述のように十倉氏との癒着について『週刊ポスト』記事で指摘した。昨年の6月7日、十倉氏は新しい資本主義実現会議に出席するために総理大臣官邸を訪れた。この時に十倉氏は新原氏にワインを贈呈した。十倉氏から新原氏に贈られたワインは、ブルゴーニュの名門シャトー「ルロワ」のもので、値段は3万3000円という高級品。こうした物品の提供を受けることは国家公務員倫理法に違反している疑いがある、というものだった。
“新原ペーパー”については、昨年7月に筆者の取材で新原氏は「それは知らないな。僕は自分から何かをやったことはないですよ」と答えていた。 ところが新原氏の言葉は嘘であった。今回、国会で杉尾議員の質問を受けた新原氏の上司にあたる後藤茂之・経済再生担当相は、「新原氏は、その文章を作成することにしたことについては認めております」と答弁し、新原氏が作成したことは認めたのだ。
官僚の言いなりである岸田政権がこのまま新原氏のふるまいを放置するようであれば、いずれ官邸のラスプーチンとなり、国を傾けることになるのではないか──。
◆取材・文 赤石晋一郎(ジャーナリスト)/「FRIDAY」「週刊文春」記者を経て2019年よりフリーに。近著に『韓国人、韓国を叱る 日韓歴史問題の新証言者たち』(小学館新書)。『元文春記者チャンネル』をYouTubeにて配信中。