また、それらを実現させているのは、「能力がない。頭が悪いから努力するしかない」などと語る謙虚な人柄であり、事前準備を徹底的に行う努力によるものでしょう。南米やヒマラヤのロケで豊富な知識を披露できたのも、そんな謙虚さと努力あってのことなのです。
ナスDはどんなに活躍して視聴者の支持を集めても、タレント風のリポートをするようなことはありません。あくまでディレクター目線からのリポートを心がけていて、本格派の紀行ドキュメントに仕上げることで視聴者の信頼を得ています。人並み外れたポジティブな言動が笑いを誘うことはあっても、強引に笑いを取ろうとするようなところは、ほとんどありません。
「2か月間・6000キロ」の全力ロケ
もともとナスDが出演者も務めるようになったのは、限られたロケ時間の中で、より見応えのある現地の映像を撮りたいから。「自ら出演者になることでU字工事と分かれて2箇所での撮影が可能になる」という経緯がありました。つまり、“見応えのある映像ファースト”という姿勢であり、「自分が目立ちたい」というニュアンスが一切ないところも人気者となった理由の1つでしょう。
そんな見応えのある映像ファーストの姿勢だからこそ、ナスDが誕生した南米も、前回のヒマラヤも、今回のマダガスカルも、情報であふれるネット上ですら見られないものが詰め込まれているのです。そんなナスDの番組はテレビでの放送だけでなく、YouTubeチャンネルでも配信されていますが、その登録者数は119万人・総再生数は約2億回。これは放送・配信を問わない普遍的なコンテンツであることの裏付けであり、今回のマダガスカルでさらにその数を増やしそうです。
最後にその内容にふれておくと、ナスDはマダガスカルで2か月間の取材を実行。この地でしか見られない珍獣・奇獣を求めて島一周6000キロにわたる旅の様子が見られるようです。さらに予告映像には、「世界最小のカメレオン スクープ撮影に成功」「世界遺産の絶景 巨大針の岩山を踏破」のシーンもあるなど、まさに大冒険の連続。「獣医になりたかった」ほど動物好きのナスDが珍獣・奇獣たちと出会ってどんな表情を見せるのか楽しみです。
いずれにしても「この番組でしか見られない」という映像が目白押しの特番になることは間違いないでしょう。「まだまだ海外旅行ができない」という人も多い中、ナスDと彼の手がける番組は、コロナ禍を経た今だからこそ再評価されるのではないでしょうか。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。