◆インドらしさと海外映画の融合
ただし今作において踊りは決してメインではない。インド映画を1000本以上見てきたという映画評論家のバフィー吉川さんが言う。
「日本では、『インド映画=踊りが作品の主体』というイメージが強かったと思いますが、今作は違う。アメリカやアジア、ヨーロッパ映画から刺激を受け、作品に取り入れています。インド映画は現在、過渡期で海外のトレンドを取り入れようとする姿勢が強くなっている。『RRR』が大ヒットした理由は“インド映画は踊るだけじゃない”と思わせたからでしょう」
◆実は監督が超有名で世界中にファンがいる
メガホンを取ったラージャマウリ監督は過去にも日本でも大ヒットした『バーフバリ』シリーズを手がけている。
「ラージャマウリ作品の特徴はダイナミックな絵作りと、骨太なストーリー。娯楽性を追求し、観客を盛り上げる演出がすごく上手な監督で、日本でも海外でも映画好きの間ではラージャマウリ・ブランドが確立しているほど人気が高い。『RRR』はアメリカ本土で約1200の映画館で上映されていますが、この数は通常のインド映画の上映館の倍近くもある。これはとても異例のことです」(バフィー吉川さん)
RRR沼にハマったら、ほかのインド映画を試してみよう。
「ひと口にインド映画といっても地方によって特徴があり、エンタメものだけでなく、サスペンスや女性の強さを描いた社会派の作品があって本当に幅広い。監督の作家性によってアプローチも全然異なります。おすすめはネットフリックスでも見られる『オーマイゴッド~神への訴状~』です。多宗教国家のインドですが、神様はいるけれどそれを祭っている寺院や宗教家たちは全部インチキですよ、という内容です。
インドらしさを残しつつ、新しいものを感じさせる独特の進化過程にあるのがいまのインド映画。ネットフリックスなどの海外企業がインド映画に力を入れていることもあり、これからもっと幅広いジャンルのおもしろい作品が増えてくると思いますし、すでに世界からの評価も数年前から変わってきています」(バフィー吉川さん)
5月12日からは、インド映画史上初めて全米2位のヒットを記録した『ブラフマーストラ』が公開される。ちなみに、ラージャマウリ監督も本作を推している。
「監督も認めている通り、インドの神話とアメコミのヒーローの要素を組み合わせた作品です」
とバフィー吉川さん。インド映画の沼は深そうだ。
※女性セブン2023年4月27日号