「被告人が病気を持っていたら就活どころではなく死んでしまうかもしれない。被告人は性交に同意を得ていないだけでなく性交を隠していた。知らない間に妊娠していたら、発覚後に中絶しなければならず、または中絶可能期間を過ぎていたら訳もわからず出産するしかなくなっていた」
「事件にあってからOB訪問も行なえず、周りに相談もできず苦しんでいた」というCさんは当時、警察に親身に対応してもらったことがきっかけで、いま警察官になった。だが「人生が変わるくらい大きな出来事で、自分の刑事記録を手元に置くことにしたが、自分が被害にあった動画はどうしても見ることができなかった。多くの人に見られる形で写真や動画が記録に残り、生まれて初めて死にたいと思った」という。この日陳述を行なったうちの2名が、PTSDを発症していることも明かされた。
苦しみ続ける被害者たちのなかには、丸田被告とかつて友人関係にあったというHさんもいた。彼女は、事件報道を読んだ無関係の人々がインターネットに書き込んだ感想コメントにも苦しんだと明かす。
「耳目を集めたことから事件は連日報道されましたが、報道やそのコメントに私を責めるような書き込みがあったりもした。ニュースのコメントでは見ず知らずの人から批判をされました。あなた(被告)に関する報道を見ると嘔吐する」(Hさん)
もともと友人だったHさんの言葉が響いたのか、丸田被告は、目を赤くして瞬きを繰り返した。
「被告人は楽しい時間をたくさん過ごした信頼できる友人だったし、事件以降も関わっていた。それなのに取り返しのつかないダメージを受け、信頼を裏切られ、今も気持ちの整理がついていない。
私には数年、友人として楽しく過ごした記憶しかない。なのに動画や写真という証拠がある。一番ショックだったのはあなたに裏切られたこと。私と過ごした時間をどう思っていたのか、いつ犯行しようと考えていたのでしょうか。その機会を窺っていたのでしょうか」(Hさん)
ここで首を横に振った丸田被告は、Hさんの陳述が終わると、マスクを下げて鼻水を手で拭っていた。論告求刑は6月に予定されている。
◆取材・文/高橋ユキ(フリーライター)