有力門閥の御曹司に生まれれば、それだけで多くの弟子や裏方を従える存在になる。
「かつて、猿之助さんは一門の弟子に向かって“弟子なんか家畜だからな! お前らは家畜だよ!”と言い放ったことがありました。弟子とはいえ、10才も20才も年上の人もいます。いくら一門の大黒柱でも、あまりの物言いに唖然としました」(劇場関係者)
古くから猿之助を知る後援会関係者が明かす。
「まだ『亀治郎』を名乗っていた頃のことです。東京・新宿でも通な人が好んで足を運ぶ飲食店エリアの店で、居合わせた客とトラブルになったことがあったんです。警察が駆けつけるほどの騒動になり、澤瀉屋一門を中心として、周囲は火消しに奔走しました。御曹司のキャリアに傷をつけては大変だとばかりに、“誰か身代わりで出頭したらどうか”ととんでもない意見も出たようです。
それでも、猿之助自身は“どこ吹く風”だったんです。結局、金銭的な解決を図ったのか、事件になることなく処理されましたから」
一般の人ならば罰せられることでも、周囲に手厚く守られて見逃されてきた猿之助は、若い頃から周囲にたびたびこんな言い方をしてきたという。
「俺は特別な存在だ。何をしても許されるんだ」
「役」を与えてから「見返り」を求める
その意識は、2012年に「四代目猿之助」を襲名して、一層強くなっていく。
「日に日に公私混同が顕著になり、お気に入りの“優遇”が手に負えないほどになりました。最近、その恩恵をいちばん享受したのは、Aさんでした」(別の劇場関係者)
自宅で倒れていた猿之助は、付き人兼俳優の40代のA氏へのメッセージを書き残すほど、心を寄せていた。猿之助と出会う前、A氏は歌舞伎座の大道具のアルバイト。猿之助と急速に距離を縮めたのは2019年頃で、猿之助が演出を手掛けたスーパー歌舞伎に、A氏は、もともと歌手・俳優として活動していた父親とともに出演した。
「昨年は猿之助さんが立ち上げた演劇プロジェクトの公演で主役級に抜擢されました。ただ、お世辞にもAさんは演技力があるとは言えません。ちょっと前まで大道具のアルバイトだったAさんが、猿之助さんとの距離が近づくやいなや主役を射止めたんですから、周囲は眉をひそめますよ。
Aさんはもともと猿之助さんと密接な関係ではなく、ほかの有力俳優さんたちとも親しくつきあっていた。それでも、猿之助さんに役を与えられ、おまけに父親にまで出番をもらったので、“見返りとしての関係を断るに断れない”というところだったようです」(前出・別の劇場関係者)