「SNSで拡散されなければ、賠償請求額の内訳に『全国で客が激減したことで失われた利益』が盛り込まれることはなかったでしょう。そもそも、迷惑行為そのものが露見しなかったかもしれません。
ですが、行為自体は認めながらも、競合と拡散を理由に請求の『棄却』まで求めるのは、少々苦しい反論にも映ります」(全国紙社会部記者)
事実、地元住民の怒りは収まらない。迷惑動画が撮影された店舗を訪れると、客入りは盛況で、食事時には待ち時間も発生するほど変わらぬ人気だ。利用客のひとりがこう話す。
「海のない岐阜県民にとって、スシローみたいな回転すしチェーン店は安くて新鮮なネタを味わえる貴重なすし店なんですよ。みんながここのすしを食べるのを楽しみにしている。そういう店で迷惑行為をしたことはやっぱり許せないですよね。こういう行為が続けば、この地域から回転すしチェーン店がなくなる可能性だってあるかもしれない。いくら高校生でも何かしらのお仕置きが必要なのでは」
スシローと少年の裁判は、どんな結末を迎えるのか。
注目すべきはスシロー側が損害賠償を求めた相手が、少年本人であるという点だ。もちろん6700万円は、10代の少年に払える金額ではない。
2013年、都内のそば店でアルバイト店員らが食洗機に入る様子をツイッターにアップし、「バイトテロ」といわれた騒動では、店が約3300万円の負債を抱えて倒産に追い込まれた。店側はアルバイト店員らに1385万円の賠償を求める訴えを起こしたが、結局、約200万円で和解したという事例もある。
「個人経営の飲食店では、長期にわたって裁判で争う資金も時間的な余裕もない。結局、店側が折れ、泣く泣く200万円で和解したものと思われます」(前出・田村さん)
その点、スシローは経営規模が大きく体力があり、和解に応じるかどうかはきわどいところだ。
仮に裁判で全額の支払いが命じられたとしても、現実問題として、少年には支払い能力がない。
「原則としては親に賠償請求はできませんが、“親の教育”と“少年が起こした騒動”の間の因果関係が認められれば、親に支払いが命じられる可能性もないわけではない。しかし賠償金額が大きいので、その場合は親が自己破産するといった選択に迫られるかもしれません」(法曹関係者)
スシローを運営するFOOD&LIFE COMPANIESに「少年側に支払い能力がない場合の対応」について質問したところ、「係争中のため回答を差し控えさせていただきます」と回答があった。
代償は、あまりにも大きい。
※女性セブン2023年6月29日号