◆「賠償請求は予定していない」と言い切った企業
九州を中心に展開するうどんチェーン「資さんうどん」では、男性客がテーブルの上にある天かすを共用スプーンで頬張る行為の動画が拡散されたが、こちらも「捜査の状況を見守りつつ判断したいと思っています」(広報)と民事での請求を否定しなかった。被害を受けた企業のほとんどが、警察の捜査や判断を待ってから民事での損害賠償を検討するという姿勢だ。
しかし、「民事での賠償請求は予定しておりません」。こう言い切ったのは大手牛丼チェーン「吉野家」を運営する吉野家ホールディングスだ。
吉野家では、共用の紅ショウガを自分で使った箸で食べる動画が拡散されていた。4月4日、威力業務妨害などの疑いでいずれも大阪市西成区の自営業・嶋津龍容疑者(35)と岡敏秀容疑者(34)が逮捕されている。紅ショウガを食べた嶋津容疑者は「みんなを笑わせたかった」、動画を撮影・SNSに投稿した岡容疑者は「紅ショウガを食べているのが面白かったのでSNSに動画を投稿した」と供述し、容疑を認めている。嶋津容疑者は元プロボクサーで、岡容疑者はバーを経営している。
逮捕された両容疑者は成人で責任能力もある。犯行理由についても「笑わせたかった」「面白かった」と短絡的なものだ。吉野家も逮捕時には「普段、ご利用いただいているお客様に動画を見て、不快や不安な思いをさせました。外食全体の安全安心が問われるような大きなニュースになったことを大変遺憾に思っています。今後このようなことが起こらないように切に願っています」とコメントを出していた。それがなぜ民事での請求を見送る判断を下したのか。
吉野家ホールディングスの広報は「理由については控えさせていただきます」と詳細については語らなかった。