自分自身がおかしいと思っているなら、それはやっぱり病気
今から数年前に、崔さん自身が体調を崩したことも、この本を書くきっかけの一つだった。
「本当に具合が悪いのに、病院に行って検査してもどこも悪くないと言われる。私だけでなく、世の中には、そういう状態の人がたくさんいます。医者は大丈夫と言っても、寝る、食べる、といった日常の生活がうまくできなくなってしまう。自分自身が不調を感じて、おかしいと思っているなら、それはやっぱり病気なんです」
人の体を構成する三つの要素が気(体の隅々まで回り続けるエネルギー)・血(栄養を運ぶ血液)・水(体内にある水分)で、この気血水の流れが滞ると不調になる。病気の予防で大事なのは、検査ではなく自分の体の変化に敏感に気がつくことだそうで、「最高の名医は自分自身」だと崔さんの本には書かれている。
「気」にまつわる言葉が日本語には多いと崔さんは指摘する。気が利く、気がつく、気がする、気が咎める、気に病む、気を遣う。言われてみれば確かにそうだ。
「空気を読むなんて言葉は、英語にすると意味が通じないですよ。むかつくとか、腹黒い、なんていうのも、『気』にまつわる言葉です。
気持ちを抑え、感情を出さずに体の中にため込む人が多いですね。歌う、怒る、笑う、泣く。感情を発散できればいいです。ドカンと怒れる人は、その分パワーを外に出してまた再生できるんです。それをせず内向きに消化しようとするのは病の原因になります。声は生命のエネルギーが表れるので、声が元気じゃない人は気をつけてほしいですね」
コロナ禍で声を出すことを避けていると、内臓疲労に陥ることもあり、声を出してしゃべることで内臓が元気になるそうだ。
体の不調は自分が持っている「気」を使いこなせていないために起こり、「気」を存分に経絡(気が通る道のこと)に巡らせるために自然からエネルギーをもらう必要がある。この本では季節を味方にしたケアのやり方や過ごし方、食べものの取り入れ方なども紹介されている。
治療で他人の「気」を受け止めるので、自分の体から出すことを意識的に心がけているという。コロナの前は、年に2回、休みを取って中国に戻り、体調を整える期間をつくっていたそうだが、コロナで自由に渡航できなくなり、新たに乗馬を始めた。
「乗馬の動作は太極拳に似ています。今は往復2時間かけて、千葉まで馬に乗りに行っています。馬の呼吸に合わせてのんびり息を落とすことができ、雑念も払えます。理想の呼吸に戻して力を抜くことができれば内臓も回復するんですけど、都会であわただしい毎日を過ごしているとなかなか難しいですね」
取材・構成/佐久間文子
※女性セブン2023年6月29日号