ただ、現在の主流となっている野球専用球場は、1960〜1970年代に流行したフットボール兼用の円型スタジアムと違い、外野の膨らみがあまりありません。その結果、サイクルヒット達成のための最大のカギとなる三塁打が減少傾向にあり、たとえ大谷さんのような才能の持ち主でも再度達成するのは容易でありません。
2022年シーズン終了時点でノーヒットノーランがMLB全体で通算318回、サイクル安打は通算339回とほぼ同じぐらいの数字です。つまり投手がノーヒッターを達成するのと同じぐらい打者のサイクルヒットは難しい記録だと言えるのです。
従って、もし大谷さんがノーヒットノーランの快挙を成し遂げたとしたら、投打で同じぐらい難易度が高い記録を1人で2つ達成することになります。MLBで誰も達成したことがないノーヒッターとサイクルヒットのダブル偉業達成! まさか、こんなことまでやってしまうとは、と何度も思わせてくれた大谷さんなら、大いに可能性があります。皆さん、大いに期待しちゃいましょう。
【プロフィール】
福島良一(ふくしま・よしかず)/1956年、千葉県生まれ。大リーグ評論家。1968年に日米野球を初観戦し、本場のアメリカ野球に魅了される。1973年に初渡米して以来、毎年のように全米各地で観戦。MLB全球団の本拠地はじめ、マイナーリーグ、独立リーグなど数え切れないぐらいの球場を訪問。大リーグ通の第一人者だった故伊東一雄氏の薫陶を受け、現在は日刊スポーツなどで執筆のほか、テレビ、ラジオなどで評論。NHKなどを経て、 2020年からはインターネットTVのSPOTV NOW、ABEMAでMLB中継の解説者としても活躍中。著書に『大リーグ物語』(講談社現代新書)、『大リーグ雑学ノート1、2』(ダイヤモンド社)など多数。
※福島良一『もっと知りたい! 大谷翔平』より一部抜粋・再構成