(Getty Images)

2021年、オールスター前夜祭のホームランダービーに出場した大谷(Getty Images)

 不滅の大記録と言われた通算ホームラン714本を放ったベーブ・ルースも、幾つもの特大ホームランを打っています。最も有名なのは、1919年4月4日にフロリダ州タンパのプラントフィールドで行われたジャイアンツとのオープン戦で打った1発です。飛距離587フィート(約179メートル)の超特大弾に本人も「自分が打った中で最も大きな当たりだった」と述懐。球場の跡地にも「ここでルースが自己最長ホームランを打った」という銘板が掲げてあります。しかし、歴史家によると実際は552フィート(約168メートル)だったとか。いずれにしても、伝説に残る1発だったことに疑う余地はありません。

 2015年以降は「スタットキャスト」によって正確な飛距離が出るようになりました。その中で、2019年6月21日に当時レンジャーズのノマー・マザラが飛距離505フィート(約153.9メートル)の最長ホームランを記録。それに次いで2016年、当時マーリンズに在籍していたジャンカルロ・スタントン(ヤンキース)、2022年ロッキーズのCJ・クロンが504フィート(約153.6メートル)の特大弾を打ちました。

ホームラン競争で最長513フィートを記録

 ホームランと言えば2021年、コロラド州デンバーのクアーズフィールドで行われたオールスター戦前日に行われる前夜祭の「ホームランダービー」に大谷さんが日本人では初めて出場しました。

 残念ながら第1ラウンドで敗れはしましたが、500フィート(約152メートル)以上のホームランを6発も放ち、最長513フィート(約156メートル)を記録しました。標高1600メートルの高地に球場があり、平地に比べて打球は10%ほど伸びると言われますが、それでも度肝を抜かれるような大きなアーチでした。

 MLBでパワーピッチャーの目標が時速100マイルだとすれば、パワーヒッターの目標は飛距離500フィート以上の超特大ホームランです。おそらく地球上で時速100マイル以上のボールを投げ、さらに飛距離500フィート以上のホームランを打てる選手は大谷さんしかいません。投打で「100&500」の大記録。まさに唯一無二のプレーヤーです。

【プロフィール】
福島良一(ふくしま・よしかず)/1956年、千葉県生まれ。大リーグ評論家。1968年に日米野球を初観戦し、本場のアメリカ野球に魅了される。1973年に初渡米して以来、毎年のように全米各地で観戦。MLB全球団の本拠地はじめ、マイナーリーグ、独立リーグなど数え切れないぐらいの球場を訪問。大リーグ通の第一人者だった故伊東一雄氏の薫陶を受け、現在は日刊スポーツなどで執筆のほか、テレビ、ラジオなどで評論。NHKなどを経て、 2020年からはインターネットTVのSPOTV NOW、ABEMAでMLB中継の解説者としても活躍中。著書に『大リーグ物語』(講談社現代新書)、『大リーグ雑学ノート1、2』(ダイヤモンド社)など多数。

※福島良一『もっと知りたい! 大谷翔平』より一部抜粋・再構成

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