坂本さんは、今や無人販売店を「誘蛾灯と変わらない」と感じているとも話す。
「結局、何度も泥棒に入られてもなんら対策を行わず、まるでコンビニの軒先にぶら下がっている誘蛾灯のようだと思いましたね。盗まれやすい、被害に遭いやすい状態を放置しておいて、犯人がやってきたら防犯カメラ映像を、SNSやテレビなどのメディアを使ってこれでもかと晒しあげる。泥棒は当然ダメですが、実際に店舗で犯罪がたくさん起きていて、その原因が店の運営形態にあることは明らかでしょう。正直な話、犯罪を誘発しているような部分もあるのではないか」(坂本さん)
防犯カメラ映像はSNSで人気コンテンツのひとつだが、それを店側がすすんでネットに放出しているというのだ。容疑者の情報を少しでも集めたいのかもしれないが、店名や所在地を明らかにしているアカウントから発信されていることが多く、事件解決には繋がらない、興味本位な注目を集めやすくなっているのも事実だろう。
本音は、ここまで泥棒に入られるとは思っていなかった
こうした近隣住人の声に、無人店舗運営側はどう反応するのか。関東地方で複数の無人販売店を運営する金崎慎吾さん(30代・仮名)は、あくまでも「商売」と言い切る。
「泥棒が入ったり、代金の一部しか支払われていないことは、すべての無人販売店で例外なく起きているはずです。ただ、我々もそういったことは織り込み済みで、被害で出る損失を考慮しても、人件費がかからない無人店で回した方が、効率がいい」(金崎さん)
実際、金崎さんの元にも、近隣住人から同様のクレームが入ったというが、元から店内には防犯カメラが5台も設置されていて、さらに防犯体制を強化しようとすると、店は一気に赤字になる恐れもあるという。
「本音を言うと、ここまで泥棒に入られるとは思っていませんでした。確かに、日本人の善意にもたれかかった商売形態であることは否定しません。まあ、実質的なコロナ明けの状態だし、店舗の売り上げはどこも確実に減っている。需要は減り続け、私もいつまで店舗を運営するのか。先は長くないと思いますがね」(金崎さん)
こうしたニュースが流れるたびに、自分の周辺は大丈夫だろうかと不安を覚えるかもしれない。事件に付随して様々な騒動が起きていることは報じられないが、その地域で暮らす人にとってより深刻なのは、事件そのものよりも継続的に続くトラブルのほうだろう。だが、ただこうした事件報道を眺めているだけでは、本当に悩まされるだろうことには想像が及ばない。安心安全な暮らしを維持するには、これまでとは違う、新しい試みが必要とされているのかもしれない。