前日の食事次第でズレる
血圧同様、健診時の採血で示される「血糖値」も気になるところだ。
もし基準値を上回る「高血糖」となれば「糖尿病」と診断されることになり、こちらも長引く“薬漬け”の生活の端緒となり得る。
だが、この「血糖」の値の評価に注意が必要だと指摘するのが日本糖尿病学会専門医の竹村俊輔医師(医療法人社団ミレナ会日暮里内科・糖尿病内科クリニック院長)だ。
「健診では食事前の血糖値『空腹時血糖』を測り、それが126mg/dl以上の場合、『糖尿病型』と診断されます。しかし、この数値は前日の食事の内容や量で変化する可能性があるので注意が必要です」
例えば検査前に丸1日以上食事を抜いてしまえば、その分、空腹時血糖の値は低くなる可能性があり、前夜に暴飲暴食をしていれば高く出ることもあるのだ。
そのため、実際に専門医による糖尿病の診断などで重要視されるのは、食事や運動の影響を受けない「HbA1c(ヘモグロビン・エー・ワン・シー)」という値だ。
「血中のブドウ糖と結合するヘモグロビンの割合を示すHbA1cは、過去1~2か月の血糖の平均値を示しており、これが6.5%以上で糖尿病と診断されます。
例えば空腹時血糖が基準範囲でもHbA1cが7以上と高ければ糖尿病と診断されることもあります。また、専門医による治療開始後は、(空腹時血糖ではなく)HbA1cが血糖コントロールの目標値とされるケースが多い」(同前)
健診での空腹時血糖の値を見て「110を超えたから危ない」などと単純に考えると、実態を正しく捉えられていないリスクがあるということだ。自分の数値が“高すぎる”という勘違いもまた危ういとされる。
竹村医師は「高齢者は血糖値を下げすぎてはいけない」という。
「今まで血糖値は『低ければ低いほどよい』とされてきましたが、近年、改訂されたガイドラインでは、高齢者に対して、『血糖値をこれ以上、下げてはいけない』という下限値が記されています。インスリン注射や血糖降下薬などで、血糖値が下がりすぎてしまい、(意識消失など)低血糖発作を発症すると、最悪、命に関わります」
すでに高血圧や糖尿病と診断されて薬を服用している人も、自分の本当の「数値」がいくつなのか、そしてその数値が本当に病気のリスクを高めているのか、医師と対話を重ねるなかで慎重に見極めたい。
※週刊ポスト2023年7月14日号