2022年10月1日、全線運転再開を祝う記念列車「再会、只見線号」は約2時間半遅れで会津若松駅を出発した(時事通信フォト)

2022年10月1日、全線運転再開を祝う記念列車「再会、只見線号」は約2時間半遅れで会津若松駅を出発した(時事通信フォト)

2022年の全線復旧後の盛況ぶりに驚く只見線

「只見線は2011年7月の豪雨災害で線路や橋梁が被災してから、長らく不通になっていました。しかし、地元は復旧させたいという熱意があり、福島県や沿線自治体、JR東日本による話し合いが何度も繰り返されました。こうした話し合いを重ね、只見線は全線復旧に至ったのです」と話すのは、福島県只見線管理事務所の担当者だ。

 只見線は福島県会津若松市の会津若松駅と新潟県魚沼市の小出駅を結ぶ約135.2キロメートルの長大路線で、急峻な山岳地帯を走っている。山岳地帯ゆえに沿線人口は少なく、利用者も決して多くない。そのため、会津若松駅と小出駅間を通しで走る列車は1日に3本しか運行されていない。

 只見線は当然ながら不採算路線。ゆえに、JR東日本は只見線の復旧に後ろ向きだった。それでも福島県や沿線自治体は諦めず、県や市町村が鉄道施設を保有し、JR東日本が列車の運行を担当するという上下分離方式を導入。2022年10月に全線復旧へと漕ぎ着けた。

 福島県や沿線自治体、観光協会などは全線復旧が決まった直後から只見線の活性化に取り組むべく動き始め、沿線外利用者を呼び込むためのプロモーション活動を盛んに展開。そのため、全線復旧後は平日でも観光客・行楽客が押し寄せた。只見線は列車の座席はすべて埋まり、立ち客もいるという混雑ぶりだった。そうした状況を受け、JR東日本は一部の列車で車両を増結するという対応を取っている。

「以前から只見線は秘境路線として一部の人たちから人気がありました。しかし、2022年の全線復旧後の盛況ぶりには驚くばかりです。利用者の多くは沿線外から訪れる観光客・行楽客ですが、只見線は全線を乗り通すだけでも約5時間かかります。途中下車を考慮すれば、只見線を訪問するには宿泊が欠かせません。宿泊を伴う只見線の旅は、地域経済にとっても大きなプラスです。こうした状況を受け、沿線自治体ではさまざまな地域活性化策に取り組んでいます。そうした取り組みからは、なんとしてでも只見線を残そうという地元の熱意を感じます」(福島県只見線管理事務所の担当者)

 只見線の盛況がいつまで続くのかは未知数だが、周囲の予想に反して幸先のよいスタートを切ったことは間違いない。地元も盛況を維持するべく、あれこれと知恵を絞っている。
只見線の奮闘は、廃線危機に直面している自治体・沿線住民にとって希望を抱かせる朗報といえるだろう。すべてのローカル線が只見線のようにうまくいくとは限らないが、ローカル線には未知の可能性がまだ眠っている。

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