「あと、ちょっとズボラなところも実は似ています(笑)。軽部さんからは『そういう素の部分をもっと出して』と、アドバイスされるんです。今のところ、“女軽部”出ている度合いは60%くらいでしょうか。まだ発展途上です」
素の自分とは──。メインキャスターとなって過ごす中で、「自分らしさ」について人知れず悩んでもいた。昨春からレギュラーコーナーとして自身の名前を冠した体験企画「やってセイカ!」がスタート。自らロケへ出て、体当たりしたリポートが毎週放送されている。
「アナウンサーの主な役割は取材対象の人、物、場所を引き立てることなので、自分のオリジナルを出す機会はないんです。『やってセイカ』は私自身の素が出る体験企画なのですが、急に言われても“私の素とは!?”と最初は戸惑うばかりで……。まずはそこから体当たりでした。無我夢中でしたが、だからこそ、意識していたら出てこない素の表情やリアクションを引き出してもらって、感謝しています。放送を見ると“あの時こんな姿をしていたんだ、私。恥ずかしい!”と赤面してしまうシーンも多々ありますが(笑)、キャラが出ていると言っていただける機会も徐々に増えて、励みになっています。
今ではのびのびとロケに挑めるようになりました。私自身が考える自分らしさは、のほほんとしているところです。ひとりっ子なのでマイペースな性格で、アナウンス室でもよくそう言われます。ですが……、メインキャスターとなってしっかりしなきゃと気負うあまり、以前よりも、のほほんとした自分が少なくなっている気がしていたんです」
本来の自分らしさが薄れてしまったようにも感じていた、と井上アナは明かした。
「つい最近、福岡の幼なじみとおしゃべりをしていたら、『せいちゃんはやっぱり、ずっと変わらないね!』って言ってくれたんです。それがすごく嬉しかった。あぁ、福岡の町で生まれ育った、上京してきた頃の自分もしっかりいるんだ、って。そのたったひとことで心の霧が晴れて、元気をチャージできました」
さりげない親友の発言に、言葉の力を実感したという井上アナ。言葉を届ける立場として、自身も見る人の心に寄り添う言葉を毎朝語りかけたい──そう、決意を新たにした。
撮影/熊谷貫 取材・文/渡部美也