顧客はビッグモーターを信頼して車を預けている。それが裏切られた格好だ。そしてビッグモーター側はその裏切りは元工場長、元本部長、そして現場の責任であり「それなりの償いをしてもらいたい」としている。
「そういうことはわからない。しかし、そういう会社に就職したことに私も学校も絡んでいることは事実だ。パワハラも酷かったと聞く。知っていればと思うと、どうにもならないこととはいえ辛い」
彼の教え子ではないがビッグモーターに勤めた経験のある整備士の方が、新卒時のことを振り返る。
「元ビッグモーター」の整備士は人手不足でも雇われないかも
「有名な大手で給料がいい、中古車は色々な国の車も扱える。いずれ独立するつもりだったのでビッグモーターを選びました。高校の先生も『大手はいいぞ』と後押ししてくれました」
工業高校、彼の他にも数人が同期として入社したと話す。
「仕事は正直きつかったですが、他を知らないのでこんなものか、と思ってました。でも私のころはそこまで酷いとは感じてません。その後に入った修理工場やカーショップも酷いものでしたから。整備士なんてそんなものです」
整備士もまた人手不足だ。1級整備士を持っていても手取り10万円台という待遇が当たり前のようにあり、それが報じられても一向に改善する気配がない。本旨でないため置くが、現場に金がまわらない、現場に押しつけられる、は日本の花形産業である自動車業界もまた同様である。
「そういう業界でビッグモーターはがんばれば給料は上がるし、平均的にも高かったと思います。だからあれだけの人も集まったし、出店攻勢もできたのでしょう」
ビッグモーターの従業員数は約6000名、全国で300店舗を展開しているとされる。
「私の父親はトラックドライバーなんです。ラジオでビッグモーターのCMが流れるから、よく知ってました。『こんなにCMを入れられるなんて大手だな』と感心してましたし、私の入社も喜んでくれました」
認知度もまた就職のひとつの鍵となる。とくに新卒はそうだ。なにしろビッグモーター、テレビCMはもちろんだがラジオCMが本当にすごかった。どの局も常に「ビッグモーター」の声が止むことはなかった。いまやビッグモーターはCMを自粛、ラジオはACジャパンの代替広告ばかりとなってしまった。