同様の理由で、「ループ利尿薬」も夏は中止を検討したほうがいい。
「心不全に対して処方されるループ利尿薬は、降圧剤としては第一選択薬ではないものの、腎機能障害などのためにサイアザイド系利尿薬の効果が弱い時に降圧剤として処方される場合があります。特に利尿作用が強く、そもそもこの薬によって脱水状態に陥る恐れがあります」(同前)
ループ利尿薬を降圧剤として服用する人は、重度の高血圧で複数の薬を併用している場合が多い。
「夏はループ利尿薬で脱水状態になるリスクがあるうえ、ほかの降圧剤などと併用すると、やはり薬が効きすぎて血圧が過度に下がってめまいやふらつきによる転倒を起こしかねない。高齢者の場合、最悪、寝たきりになる可能性もある」(同前)
ある救急医は最近こんなケースを見たという。
「主治医にカルシウム拮抗薬とACE阻害薬、ループ利尿薬の3種類を処方されていた70代男性が、階段で転倒して骨折、救急搬送されてきました。全治3か月の重傷です。本人は梅雨入り頃からめまいを自覚していたのを『熱中症だろうから水を飲めば大丈夫』と放置したそうです。たまに測る血圧も普段より低かったようで、男性のめまいは薬の効きすぎによる低血圧が原因と推測されます」
医師との対話が重要
ACE阻害薬やARBなどの降圧剤は夏に効果が高まる傾向があるという。横尾医師が解説する。
「体内で血圧上昇作用を持つ物質アンテジオテンシンIIの生成や作用を抑制して血圧を下げるのがACE阻害薬やARBです。これらはアンテジオテンシンIIの元となるホルモン『レニン』の分泌が少ない時はあまり効きません。そのレニンは、夏に塩分が失われ、脱水状態に近づくと分泌が増えて活性化します。そのため、冬と同じ服用量でも、ACE阻害薬やARBは夏のほうが効きやすくなるのです」
一方、夏でも「やめないほうがいい」のが、第一選択薬として広く処方されているカルシウム拮抗薬だ。