「プロを目指すには、まだまだ実力が足りない」
県内のライバルである東北高校との準決勝で先発した湯田は、投手陣のなかで最速の投手で、スライダーがウイニングショットだ。
「自分の球速がなぜ出るのかを考えた時、その要因がわかった。踏み込んだ左足がしっかり地面の反力を使えているらしいんです。正しい身体の使い方とかを可視化することができたという意味で貴重な体験でした」
2日間にわたった動作解析では、投球時の重心移動など地面反力を測ることのできる特殊なマウンドを利用して、主に両脚の使い方を指摘・指導されたという。大会の直前に、新たな情報をインプットして、投球フォームを試行錯誤することのリスクについては考えないものだろうか。
「ネクストベースで得た材料は、高校野球を引退した後に活かそうと考えています。何かを改善しようというのではなく、自分の特徴を把握するという経験でした」(湯田)
岩手出身の仁田も、身長175cmながら球速は150キロを超える。
「自分はバネが強いと言われました。その一方で、(踏み込んでいく)右足の使い方が悪く、筋力が弱いと指摘されました。大会前なので、投球フォームに大きな変化はないんですけど、右足のトレーニングを増やしたりはしましたね。プロを目指しますが、まだまだ実力が足りない。足りない部分を今回得た情報などで補っていきたい」(仁田)
全国制覇を達成した昨夏から1年——―。新チームは「2度目の初優勝」をスローガンに掲げてきた。最先端の動作解析も活用しながら、再び、聖地帰還を果たした。宮城大会の閉会式後、夏連覇に向けた意気込みを訊ねられた須江監督はこう謙遜した。
「100年に1回しかなかったことが、2年連続で起こるなんてことはないと思います」
一笑に付した須江監督だが、目だけは笑っておらず、本心は違うだろう。仙台育英は大会初日の第3試合で、埼玉の強豪私立・浦和学院と対戦する。1回戦屈指の好カードだ。
♦取材・文/柳川悠二(ノンフィクションライター)