♦節目に送られてくる花束
坂口がオリックスで外野のレギュラーをつかんだのは、プロ6年目の2008年。同じく高卒のドラフト4位で1年早く西武に入団していた栗山は2005年から一軍に定着し、2008年に最多安打(167安打)のタイトルを獲得している。坂口も3年後の2011年に最多安打(175安打)に輝いた。
「プロの世界に入って一軍のレギュラーとして、同じグラウンドに立てた時は感動しましたね。憧れの人ですから。西武戦の時は必ず挨拶に行っていました。打撃の話題で『どう思う?』って聞かれた時は、ホンマうれしかった。バットも頂いたり。通算2000安打を達成された時は、何も驚きがなかった。苦労されたことは当然あると思うけど、栗山さんなら達成すると。中学の時に受けた衝撃は間違ってなかったなって。プロの在籍年数も安打数もきっちり負けている(笑)」
坂口は近鉄、オリックス、ヤクルトと3球団を渡り歩いたプロ20年間の野球人生で通算1526安打を記録。昨季限りで現役引退した。栗山は西武一筋で今年が22年目。「ミスターレオ」のあだ名でまごうことなき西武の功労者だ。40歳を迎えた今季は2100安打をクリアした。意外なことに、2人はプロ入り後に会食した機会がない。ただ、坂口が1000安打、1500安打など節目の記録を達成した際に、栗山から必ず花束が贈られてきたという。「覚えて頂けていると思うと、気が引き締まりましたね」。憧れの人と絶妙な距離感が良いのかもしれない。
西武は今季5位と低迷し、若返りの変革期を迎えている。栗山は代打での出場が多かったが、7月9日のオリックス戦からスタメン出場した4試合で3本塁打を放つなど復調の気配を見せている。解説者としてバックネット裏から熱視線を送る坂口はどう感じるだろうか。
「試合に出たり出なかったりだと、なかなか調子を上げるのが難しい。栗山さんの打撃を見る限りスイングは鋭いし、力が落ちているとは感じません。スタメンで出続ければ結果は絶対残すと思います。西武が浮上するためには必要な選手ですし、1年でも長く現役でプレーして欲しいですね」
言葉に熱がこもる。中学1年の時に出会って25年以上の月日が経ったが、栗山に抱く尊敬の念は少年時代の当時と変わらない。
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■取材・文/平尾類(フリーライター)