自分のいた世界とは決して近しくなかったものの、ヤンキーには惹かれる部分が多いのも事実です。
小学5年生の頃、1学年上に校舎裏に同級生を呼び出してはタイマンを張る“女番長”がいて、すごくきれいな子だったことを覚えています。『ティーンズロード』に出て来る総長たちもそうですが、あの頃の不良は美人ばかりだったイメージがあります。けんかが強い上に10代でバイクを乗りこなす身体能力があるのも、コンプレックスを抱えるくらい運動が苦手な私にはとてもうらやましく感じました。
その延長なのか、ビッグダディブームの際には、サイン会に足を運ぶほど美奈子さんにハマりました。ダディに土下座をさせるなど、無敵感や生命力、図太さや自由さに元気をもらえる気がしたんです。
この本に出て来る少女たちもそれに通じるチャームポイントがあるように思います。つなぎのような特攻服を着て、女だけで集会を開いて……まったくモテようとしていないところも潔くてかっこいいですよね。都内の私立女子校に通う高校生の方が文化祭やら合コンやらでよっぽどチャラチャラしていたんじゃないでしょうか。
知られざるヤンキー少女たちの世界の魅力はもちろん、シンナーによって体を蝕まれ、命を落とす少年少女もいたことなど、シリアスな面もしっかり書かれているのも本書の読みどころ。
逆に言えば、薬という一線さえ越えなければ、一時期のヤンチャは成長過程だという『ティーンズロード』編集部の方針には完全に同意。誰しも人生は常に順調なわけではないから、回り道をして人生経験を積むのも、悪いことばかりではないと思います。
【プロフィール】
辛酸なめ子(しんさん・なめこ)さん/1974年東京都生まれ、埼玉育ち。漫画家、コラムニスト。武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。著書に『女子校礼讃』『辛酸なめ子、スピ旅に出る』『大人のマナー術』など多数。
『特攻服少女と1825日』(小学館)
居場所を求めてさまよっていたレディース総長たちと「活字のマブダチ」との青春の日々と、彼女たちのいまをつづったノンフィクション。
※女性セブン2023年8月31日号