A君の布団には「精王」と書かれていた

A君の布団には「精王」と書かれていた

「動画の中には、暴力シーンが多く含まれていて、それを編集や加工して、みんなに見せるためにおもしろくなる工夫をしています。加害者の顔がほとんど映っていない点で、作っている加害者たちの悪質さが出ています。動画が脅しの材料となる可能性も否めません。旧態依然とした環境の中で子供だけの空間があると、今回のような問題が起きると考えると恐ろしい事案だと思われます」

 自身の所有する寮で起きたいじめ事件について、剣道部顧問は、「すべて学校と弁護士が対応していますので、質問があれば学校に問い合わせてください」と繰り返すだけ。 磐田東高校に今年3月に全国高等学校剣道選抜大会を辞退した理由、A君のいじめ問題、警察による現場検証について問い合わせると、以下のように回答した。

「この件に関しましては、現在、第三者委員会にすべてを委ねての調査を行っていますので、現段階での回答は控えさせていただきます」

 いじめ発覚から半年が経とうとしているが、調査は進展していないという。被害を受けたA君は4月に学校を辞めた──。両親は学校、顧問への不信感を露わにした。

「顧問や学校を信じて子供を預けていました。寮で息子の生活態度に問題があれば、すぐに連絡をほしかったです。学校は今もいじめの公表はしていませんし、いじめとは認めず、寮で起きた“悪ふざけ”だという認識です。

 全てを把握しないと何も説明できませんという主張で、校長にすら会えていない状態です。学校からは第三者委員会を設置し、委員を選考していると連絡を受けています。調査すら始まっていないという認識ですが、(いじめに関わった生徒たちへの)学校側の処分は行われたとメールがきました。『個人情報』や『調査中』を理由になにも説明がなく、とにかく真実が知りたいという一心で、私たちには警察に被害届を提出するしかありませんでした」

 除籍となった上級生3人のほかに、当時止める立場でありながら、いじめに加わっていた幹部部員F、Gらは今も剣道部に在籍している。現在、いじめに関わったとして別の加害者の被害届も新たに受理され、警察が捜査を始めているという。

 同校は校訓に「中庸の道」という言葉を掲げている。自分を真正面から見つめ、常に偏らず、正しい生き方に徹する人間に成長することを願う意味が込められているという。警察も捜査に動き出したいじめ事件。学校、教員、加害生徒は真正面から自分を見つめることができているだろうか。

(了。前編から読む

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