栄養たっぷりで冬眠しない個体も
家畜が襲われるケースは北海道以外でもある。こうした状況から、OSO18のようなクマが今後出ないとも限らないと山内さんは言う。
「岩手では鶏小屋が襲われ、100羽近くが食べられてしまった。おそらく、最初は鶏の餌を狙って近づき、鶏のおいしさを学習したのでしょう。第2、第3のOSOが生まれてもおかしくはありません。また、高たんぱく食で栄養状態が高くなると、冬眠する時期が遅くなるともいわれています。実際に1〜2年前、真冬にヒグマと遭遇した人もいます」
人に慣れて怖がらなくなった
人間との距離を狭め、肉の味を覚え、賢くなっていくクマ。ますます人間の生活範囲に近づいてくる可能性はあるという。
「かつてにくらべて凶暴化するとか、人間を恐れず襲うようになるということは考えにくいですが、人に慣れてしまったクマがすぐ近くに出没するケースには注意が必要です。本来、クマは非常に警戒心が強く、人の姿を見ると逃げるのですが、そうではない個体も増えている。農作物や家畜に執着するあまり、それを守ろうとする人間を攻撃する可能性はゼロではありません」
増え続ける被害について、山内さんはまずは国レベルの対策が必要だと警鐘を鳴らす。
「シカやイノシシと同じように国がしっかりと捕獲に対して予算をつけるべきでしょう。高齢化で減少しているハンターに頼らない捕獲体制を構築したり、里山や耕作放棄地を整備したりするなど、とれる対策はまだまだあります」
山に入るとき個人ですべき対策は、とにかく出会わないようにすることだ。
「基本的に、クマは人がいるとわかれば近づこうとはしないので、山に入るときや山の近くで作業する場合は、ラジオや鈴、笛などの音の鳴るものを携帯しましょう。目撃情報があれば市街地でも注意が必要です。どんなに行き慣れた山でも万全の対策をしてください」
もし出会ってしまったら、クマを刺激せず後ずさりして離れる、頭を守ってうつぶせになるなどの策も広く報じられている。明日は我が身と、できることからはじめよう。
※女性セブン2023年11月9日号