(写真/PIXTA)

(写真/PIXTA)

電気柵を設置しても「ビビッ」をがまん

 変化は、行動範囲の拡大だけではない。もともとクマは学習能力が高いため、人間が対策をしても想像を超える行動をすることがある。

「クマは学習能力の高い、賢い動物です。農作物のおいしさを一度でも覚えれば、その味と場所を記憶して何度もやってきます。被害に遭ってから電気柵を設置しても効果が得られないこともあります。高い学習能力に加え執着心も強いので、一度はビビッと感電しても、一瞬の痛みをがまんすればおいしい食料にありつけると認識し、強行突破はもちろん柵に触れないよう地面を掘る、乗り越えるなど策を講じます」

「自分たちは食用ではない」と認知

 人間のライフスタイルの変化も、クマの行動を大胆にしているようだ。

「かつて山あいで暮らす人は、森の木を木材や燃料に活用していたので、人里近くの山にはいまのような大きく成長した木々がありませんでした。また、人間にとって野生動物は食料でもあったので、動物の側が『人間に見つかったら隠れる場所もないし食べられる』と警戒していた。

 しかしいまは、かつて田畑だった場所にも草木が生い茂って隠れやすいし人間も捕獲しようとしない。クマのみならず野生動物はそれをわかっているのです」

シカやイノシシで肉の味に執着

 被害の対象が農作物に留まっていた頃はまだ平和だったのかもしれない。このところ、死亡やけがといった人的被害も目立っている。また、北海道釧路管内で2019年から2023年にかけて66頭の家畜を襲い32頭を殺した「OSO18」は人々を恐怖に陥れた。罠を避け、ハンターの目をかいくぐっていたが、今年8月にあっけなく仕留められた。

「クマは完全な草食というよりは雑食で、死んだ野生動物の肉などを食べることが以前からわかっています。

 いま、かつてない勢いで野生のシカやイノシシが増加し、環境省や農林水産省は予算をつけて有害捕獲に力を入れていますが、あまりにも捕獲される数が多く、ハンターは捕獲された個体を地中深くまで埋める時間がないなど、適切な処理ができていないのが実情です。つまり、至るところに死肉というたんぱく質が放置されている状態が生まれ、肉に執着するOSOのような個体が出てきたという指摘もあります」

関連記事

トピックス

10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン