儒教思想が根強く残る北朝鮮では、女性の最高指導者への抵抗感があるという。息子の存在はともかく、そうした状況だからこそ、まだ10歳前後とまだ幼いにもかかわらず、ジュエ氏を表舞台に出し始めたのではないかという読みもできる。
「早めに公に出して、長い時間をかけて、人民に慣れさせるという意図があるのではないか。『新星女将軍』の情報を除外しても、現時点で金正恩体制がジュエを後継候補の筆頭に位置づけている可能性は極めて高いと思います。
というのも、北朝鮮メディアはジュエに対して『尊敬するご子息』という敬語を使っているからです。これまで国営メディアが存命中の人物に敬語を使ったのは、金日成、金正日、金正恩の3人に対してだけで、正恩の妹の与正にさえ使いません。もちろん、先は長く、今後何が起きるかはわかりませんが、少なくとも現時点では筆頭候補と言えます」
北朝鮮の人民や国際社会がどう反応するかを見るために、“お試し”で表舞台に出してきた可能性もある。まだ先は見えない。
◆取材・文/清水典之(フリーライター)