レースが終わったばかりの時、ジョッキーはとても興奮していますが、乗り方の失敗については本人が分かっていることだと思います。一生懸命言い訳するかもしれないけれど、それは騎手だからしょうがない。あれこれ言いたいのをぐっと我慢。怒っても結果は変わらないので、次につなげるためにどうしたらいいか話し合います。若いジョッキーが技術を研いて経験を積んでくれれば、調教師としても選択肢が広がってくるというものです。
先日、現役時代とてもお世話になった調教師の方とお話しする機会があり、「ジョッキー時代に僕が乗って負けた時、先生は咎めることはおっしゃいませんでした。実際は言いたいことがたくさんあったのでしょうね」とうかがったら、大笑いしながら「君もやっとわかるようになったか」と言われました(笑)。僕も先生方にそんな思いをさせていたと思えば、レース後のジョッキーとも冷静に対話することができます。
【プロフィール】
蛯名正義(えびな・まさよし)/1987年の騎手デビューから34年間でJRA重賞はGI26勝を含む129勝、通算2541勝。エルコンドルパサーとナカヤマフェスタでフランス凱旋門賞2着など海外でも活躍、2010年にはアパパネで牝馬三冠も達成した。2021年2月で騎手を引退、2022年3月に52歳の新人調教師として再スタートした。
※週刊ポスト2023年12月22日号