退職の理由は「わかりかねます」
パー券のノルマ負担といえば、11月22日に二階派に退会届を出した桜田義孝・元五輪担当大臣が、その理由として「パーティー券を売ることが大変」と語り、300枚の販売ノルマを達成するのが難しいことを理由に挙げたことが報じられた。
「ノルマは1回生議員で50枚(100万円)、2回生で100枚、3回生で150枚といった具合に重くなるルールでした。所属議員の人数が少ないだけ、安倍派より一議員にかかるハードルが高かったかもしれません。それに超過分を戻す際には寄付金として収支報告書に載せているわけで、受け取っている議員側からすれば“私の何がいけないの?”と感じているかもしれません」(同前)
こうなると焦点が絞られてくるのは、会長の二階俊博・前幹事長や事務総長の武田良太・元総務大臣といった派閥幹部から“不記載にしろ”といった指示や共謀があったかどうか。その事実関係によって捜査の進展が左右されそうだ。
この点についてA氏はどう認識しているのか。12月20日、二階派事務所に問い合わせてみると、驚いたことに事務所の担当者は「Aさんは10月にもう退職しています」と回答した。事情聴取を受けていることを理由にした退職かを聞くと、「こちらではわかりかねます」との返答だった。
自民党派閥の裏金問題は11月下旬以降になって一気にクローズアップされたが、その直前のタイミングでの退職。派閥の不記載が刑事告発されたのは約1年前のことになるが、法令違反の責任を現場の職員に押し付けて辞めさせたのだろうか。トカゲの尻尾切りの結末となるシナリオありきで、岸田首相は二階派所属の小泉龍二・法務大臣は交代なし、派閥離脱だけで続投を了としたのか。疑念はさらに深まるばかりだ。
■取材・文/広野真嗣(ノンフィクション作家)