高齢者の4分の1が7種類以上を処方

高齢者の4分の1が7種類以上を処方

 ほかの薬でも、類する事例は枚挙にいとまがない。南日本ヘルスリサーチラボ代表で医師の森田洋之さんは驚くべき経験をした。

「精神病院に入院していた患者さんで、向精神薬を5種類、血圧やけいれんの薬なども含めると9種類の薬をのんでいた67才の女性を診たことがあります。向精神薬の副作用でけいれんを起こし続けて起き上がることも話すこともできず、認知機能が低下し意識ももうろうとしていた。ご家族から相談を受け、時間をかけて減薬したところ、すべての薬をやめることができました。

 驚くべきはその結果です。いまでは歩いたり食事をしたりと、普通に生活ができるようになったのです。先日は私も一緒に、うなぎ料理に舌鼓を打ちました」

 治療のための向精神薬が、逆に精神を蝕んでいた—本末転倒な結果が減薬によって浮かび上がった例だ。気をつけるべきは向精神薬と比較して処方のハードルが低い「睡眠薬」の中にも、向精神薬と同じ成分が含まれるものがあること。ナビタスクリニック理事長で医師の谷本哲也さんが言う。

「認知症と診断されていた患者さんで、実は睡眠薬によって認知機能が低下していたケースがありました。特に“いつものお薬を処方しておきますね”というやりとりになっていると意識されづらい。以前から同じ薬剤をのみ続けているとしても、副作用の可能性を考える必要がある場合もあります」

 ドラッグストアで市販され、手に入りやすい薬の中にも認知機能の低下を引き起こす副作用を持つものがある。

「アレルギー性鼻炎の薬や胃薬に使われるH2ブロッカーといった『抗ヒスタミン薬』全般は眠くなったり、認知機能を低下させるおそれがあります。脳の覚醒を司る視床下部にある脳幹網様体という部位のトリガーをヒスタミンといい、抗ヒスタミン薬はそれをブロックする作用があるから、眠くなるというメカニズムです。

 花粉症は季節ものなので短期間で済みますが、ペットアレルギーやハウスダスト対策として年中のんでいる人は、認知機能低下に留意した方がいい」(長澤さん)

 胃腸薬や風邪薬、酔い止め、頻尿改善薬などが該当する「抗コリン薬」と呼ばれるジャンルの薬も認知機能を下げるほか、かすみ目や視力低下などさまざまな副作用を招くので注意が必要だ。

(後編へ続く)

※女性セブン2024年1月18・25日号

薬を上手に減らす7か条

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