そして当日、午前中に行われた男子決勝戦には多数の観客がつめかけ、直後に試合する女子選手たちも興奮した様子で、声を張り上げて応援していたという。しかし、男子決勝が終わった途端、客席はまばらになった。決して、男子の側の関係者が多かったとか、男子の試合の方がレベルが高い、というわけでもなかったと貞本さんは振り返る。
「女子決勝に勝ち進んだチームは、地域内でもかなりレベルが高く、バスケを知っている熱心なファンや指導者たちはそのまま残ってじっと見入ったり、声を張り上げて応援していたんです。ただ、男子の試合のようには盛り上がりにくいという現実があります。生徒たちからは、なんで帰っちゃうの?という声も聞こえてきて、やるせない思いでした」(貞本さん)
男子と女子の決勝戦順番を入れ替えてみたが
確かに、学生スポーツでも、そして世界規模の大会でも、今なお試合やセレモニーの順は「女が先、男は後」ということが多い。それがなぜかは説明がなされないし、合理的な理由もない。言われて初めて気が付く、という人も多いだろう。問い合わせに対し、なんとなく変えないとならないような気がして変えてみたものの、女子生徒にとっても残酷な現実を見せてしまったように貞本さんには思えた。
もちろん同じスポーツ・競技といっても、男女の試合はまるっきり違う性質のもので、それぞれに面白さがある。あえて男女を比較すれば、男子の試合は、女子と比べると豪快さや力強さからダイナミックな展開を見せることがたびたびある。大きくて派手な動きは、その競技をあまり知らない人にも分かりやすく盛り上がりを感じられる。一方、女子の場合は、力で強引に動く代わりに正確で緻密な動きを重ねたり、サイズを生かしたスピードの緩急など、そのスポーツに関する知識が高まれば高まるほど見入ってしまうような、いわば玄人向きの面白さが発生しやすい。この違いは、優劣ではない。
同じ競技なのにも関わらず、男女でプレースタイルが全く異なるからこそ、女子の試合は面白いのだと貞本さんが続ける。
「男子の試合が終わり帰ってしまう方について、もちろん非難する気もありません。ただ、別の男子チームの保護者さんが”女子決勝になってガランとして可哀想だから残って(観戦して)あげた”と話されているのを聞いて、とても残念な思いでした。どういった方法が正解なのかはわかりませんが、スポーツにおいては特に、男女の違いを楽しむ、といった見方が拡がってくれればと切に願います」(貞本さん)