「忘れないでいてあげないといけない」
親族12名が集まったうち、生存が確認されたのは大間さんとはる香さんの兄、その息子の3名だけ。7名が死亡し、2名は行方不明のままだ。愛する家族を一度に失い、大間さんは、「正直、『あのとき自分も土砂崩れに巻き込まれていたら、こんな辛い思いをせずにすんだのかな』と思います」と吐露する。
「そうは思うのですが、生かされた自分は、あの子たちのことを死ぬまで忘れないでいてあげないといけません。前向きでいないと、やっぱり生きていけないんですよ。
できれば夜が来てほしくないんです。避難所にいても、静かになると、いろんなことを思い出してしまう。同い年くらいの男の子が走ってるところを見るだけで、湊介のことを思い出してしまう。泰介はおばけが怖いから、僕が寝てると布団に来て、『ギュってして』て抱っこをせがむんです。
ひとりで静かに寝ていると、そんなことを思い出してしまう。どこかで受け止めなければいけないのかもしれないのですが、今はできるだけ思い出さないようにしたいんです。まだちょっと、夜は来ないでほしいです」
取材班が倒壊した中谷家の跡地を訪ねたところ、崖崩れによって裏山の断面はまるで、チョコレートケーキがぐしゃぐしゃになったような惨状になっていた。たった一瞬で、和やかな正月の風景は激変してしまった。遺族の悲しみの日々は続く──。
(後編に続く)