持ち主を失った衣服とおもちゃ
地元の人々の協力もあり、1月1日のうちにはる香さんの兄とその子どもの2人を瓦礫の中から救出することができた。しかし、すでに日が沈み、土砂崩れや倒壊の二次被害に遭う恐れもあったため、その日は作業を断念せざるをえなかった。翌日も朝から救出作業にあたり、今度ははる香さんの祖父を発見。助け出した時点では命があったが、残念ながら搬送先で亡くなったという。
1月4日にようやく自衛隊が到着し、変わり果てた姿となった妻のはる香さんと長女の優香ちゃんが見つかった。そして翌日、長男の泰介くんと次男の湊介くんとは、遺体安置所で“再会”する。
「(当時の感情は)いや、もう、何も言えないというか。今までね、一緒に……。今ちょっと、なんか現実感がなくて答えられているんですけど、正直かなり気持ちを保っているというか。また葬儀したりとか、金沢の家に戻ったりしたら、いろんな思い出がよみがえるから……」
遺体安置所には、自衛隊の救出作業の中で見つかった品々も置かれていた。子どもたちのお気に入りだった衣服やおもちゃが、持ち主を永遠に失って、そこにあった。
「おもちゃとか服とか、今まで子どもたちがピコピコ嬉しそうに遊んでいたものじゃないですか。優香はおばあちゃんからもらった『クロミちゃん』の寝巻きをすごく気に入っていて、それも自衛隊の方が見つけてくださった。ほかにも長男の着ていた服とかがあって、言葉が出てこないというか……。近所の人も家族のことはみんな知っているから、一緒に泣いてくれました」