【疑惑3】収支報告書に記載された代表者が「寄附した覚えはない」と証言
岸田首相の後援会会長で、政党支部の収支報告書上では寄附をした「祝う会」の代表とされた伊藤學人氏が、本誌の取材に「寄附した覚えがない」と証言。これにより、首相サイドの虚偽記載疑惑も浮上している。
岸田事務所は前号の取材に、1「祝う会は地元政財界の方々に開いてもらった」、2「『祝う会』の開催経緯を知る事務所関係者からは、収入は1000万円未満だったと聞いている」、3「『祝う会』の開催後、数か月してから支部へ寄附する旨の連絡があったと聞いている」──と文書で説明。あくまで岸田事務所の主催ではないと主張したが、「聞いている」という伝聞ばかりで説得力はない。
本誌の取材では、「祝う会」の会費は広島銀行の「祝う会代表 伊藤様」名義の口座に振り込まれ、「岸田首相の父・文武氏の時代からの秘書のC氏をはじめ、岸田事務所のスタッフが経理を握っていた」との証言を得ている。任意団体の口座を作って参加者に会費を振り込ませ、その収益の一部を支部に寄附したのは、岸田事務所の自作自演だったという疑念が深まる。
亡くなった秘書になすりつけ
本誌がC氏の自宅を訪ねると、C氏は昨年12月に病死していたことがわかった。そうなると、金の流れを知るのは岸田事務所しか残っていない。同事務所に再度、虚偽記載の問題や「祝う会」への事務所の関与を質問するとこう回答してきた。
「弊事務所の元秘書(故人)が不慣れな事務局をお手伝いしていたのは事実ですが、弊事務所が主催した事実はございません。なお、会費収入は1000万円未満であったこと、支部へ寄附があったことは当時、当該元秘書から聞いています」
今度は亡くなったC秘書に責任を転嫁した。そのうえ、岸田事務所に寄附する旨を連絡してきた「祝う会」側の担当者は誰なのかという質問には答えておらず、自作自演である疑念は晴れない。
また、会費収入が1000万円未満だったことを再度強調しているのは、“仮に超えていれば報告義務が生じる政治資金パーティーの性質を持つ会だった”と自ら認めているようなものではないか。
それだけではない。元立正大学教授で税理士の浦野広明氏は、この「祝う会」が脱税にあたる可能性を指摘する。
「任意団体が収益事業を行なった場合、法人税法に基づいて課税されます。『祝う会』は収益を岸田総理の政党支部に寄附していることから、法人税の課税対象になってもおかしくないし、この団体は法人税を支払う姿勢がありませんから、重加算税や脱税に問われる可能性もある。代表が何も知らず、岸田事務所が実務を担当していたとすれば、岸田総理が主催者だと見なされるでしょう」
岸田首相自身に“脱税疑惑”がかかってくるというのだ。これだけ杜撰な政治資金の処理をしておいて、「改革の先頭に立つ」とは聞いて呆れる。
(了。前編から読む)
※週刊ポスト2024年2月9・16日号