ウケた部分をつなぎ合わせるやり方で、ボケ数が重視されがちな賞レースにおいてはもっとも即効性の高い戦術といっていい。おさむもまさとと同じ考えだ。
「ストーリーの中で笑かすのが僕らの漫才なんで。ザ・ぼんちの漫才をやりたい。それでわかってもらえんかったら、しゃあないことですもん」
漫才ブームの頃は、勢いでウケていた部分もあったという。そのぶん、ウケ量は昔より減った。だが、まさとはこう話す。
「今の漫才のほうがおもしろいし、やっていて楽しいんですよ。僕らは上手な漫才はできません。でも下手やけど味のある歌ってあるやん。あんなんが好きなんですよ」
彼らの功績は今も忘れられていない。ザ・ぼんちは2018年に文化庁芸術祭の大衆芸能部門で大賞を受賞。漫才の枠を超え、日本芸能史の功労者として高く評価された。
インタビュー中、絶え間なく伝わってきたのは、2人の本気度と緊張度だ。迂闊な発言をすると「そうやってプレッシャーをかける……」と本当に嫌そうな顔をした。
可笑しい。富も名声も手に入れたのだから、70歳を過ぎてまで、わざわざ心身を削られる戦いの場に足を踏み入れなくてもいいのに。まさとが自虐的に語る。
「今は、先を見るのはもう1日で十分。今日、無事に漫才を終えることができたなら、『ああ、やれたな』って思う。それくらい1日を乗り切るのに必死なんです」
彼らの漫才は話芸であると同時に肉体的パフォーマンスでもある。半分は冗談だろうが、半分は本音なのだろう。
昨年、和牛という人気漫才コンビが解散を発表し、世間を驚かせた。おさむに彼らの再結成の可能性について問うと、珍しく厳しい顔をした。
「彼らの考えで解散したんだから、他人が入っていったら絶対にダメ。再結成するとしても、それも彼らが決めること」