高野水登は「セリフの人」
プロデューサーの大森敬仁は高野を「セリフの人」と評す。実際、高野の書くセリフは印象的なものが多く、口上なども七五調のリズムでカッコいい。
「僕はセリフから逃げてきた人生だったんですよ。どちらかというと僕は自分を“構成の人”だと思っていたんです。だって、そうじゃなかったら『真犯人フラグ』なんてできないですよ。あれは、難解な大量の伏線をいかに回収するかというパズルみたいなものだったので。
実は戦隊ってセリフの文量がめちゃくちゃ少ないんですよ。通常のドラマの3分の2から半分くらい。アクション尺がある分短い。だから、脚本家の仕事ってすごく限定されるんです。
独自性はプロットやあらすじからは出しにくいので、1行のセリフで出すしかないんです。むしろ、そこができなかったら自分がいなくてもいい。頭のいい人が3人くらいいれば構成はできてしまうけれど、キャラとセリフだけは脚本家にしか書けない。だから、自分を信じて書くしかないんですよ。これはカッコいいはずだって。
大森さんが『セリフの人』って最初に評価してくれたのは、そういう口上とかカッコいいセリフを指していたわけじゃなくて、説明セリフを書かなかったことなんです。特撮番組はどうしても説明セリフが増える宿命があるんですよ。それをいかに説明っぽくなくするかっていうのは、一番意識していましたね」