「心臓ドック」で死亡率は下がらない
医学は日進月歩。新しい検査も次々に誕生しており、とりわけ人間ドックのオプションの中では顕著。だが、その多くは意味がないと室井さんは言う。
「人間ドックのオプションに組み込まれている検査は科学的根拠が薄い。基本的に、病気の早期発見につながる科学的根拠があるものは、自治体の検診に無料で組み込まれています」
日本では人気の「脳ドック」が一例だ。頭部MRIと頸動脈エコーなどで脳の状態を調べ、脳梗塞などの発症リスクを調べるが「脳ドックを行っているのは世界的に見ても日本だけ」だと森さんは指摘する。
「特に、首の血管を調べる『頸動脈エコー』はおすすめしません。アメリカ予防医学専門委員会では、症状のない人に行うのは、デメリットの方が大きいという理由で“行わない方がいい”としています。
というのも、検査で血管が狭くなっていることがわかると、脳梗塞のリスクが高いと診断され、首の血管の内側を切除する手術(頸動脈内膜剥離術)やバイパス手術が行われることがあります。しかし、実際は『偽陽性』の確率が36.5%と高く、不必要な手術をして、合併症が出る恐れがあるのです」(森さん・以下同)
「心臓ドック」も値段に見合う効果があるか不明。
「カルシウムスコアという心臓の冠動脈がどの程度石灰化しているかの数値をチェックできる検査です。検査そのものにデメリットはありませんが、受けたことで死亡率が下がるというデータもありません」
岡田さんも声を揃える。
「最近登場したばかりの検査であるゆえ、早期発見できた人とそうでない人を比較したデータがないため、評価できません」