“これでよかったのか”と、心を痛める悲劇を避けるために欠かせないのが「自分の意思」を事前に伝えておくことだ。
「あらゆる延命治療を拒否するのは現実的ではなく、“ここまで受けるけど、ここから先はなしかな”というイメージを本人と家族が共有しておくことが重要です。『延命しない』と大まかに伝えるのではなく、『寝たきりになって家族に迷惑をかけたくない』などと、ある程度の望みを伝えておきましょう。
また、すでになんらかの病に侵されているなら、その病気が今後どういう経過をたどるかを知っておくことで『この薬が使えないならこうしたい』とオーダーできる。完全な線引きではなくとも家族が延命治療の選択を迫られた際に役立ちます」(廣橋さん)
医師で作家の鎌田實さんも「いちばん大切なのは自己決定」と語る。
「本人が意識を失ってから家族を呼んで『呼吸が弱くなったので人工呼吸器につなげますか?』と尋ねると、家族は『いえ、結構です』とはとても言えず、誰も望んでいない延命治療につながるケースが本当に多い。それを防ぐためにも、本人が元気なうちに『万が一の場合はこうしてくれ』と家族に伝えておくことが望ましい。本人の意思を1行でも記したカードを作成しておけばベストです」
現在、医療界は人生の最終段階に備え、本人が望む医療やケアを家族や医療者などと話し合うACP(アドバンス・ケア・プランニング=人生会議)を推奨している。ACPでは本人が何を望むかが最優先されるため、もちろん「延命治療を受けたい」と希望することもできる。
「『たとえ人工呼吸器につながれても、ひ孫の結婚式まで生きたい』という意思を伝えてもいいんです。一度『延命はしない』と言明した後に、『やっぱり〇〇までは生きていたい』と発言を修正しても構いません。置かれた状況によって気持ちが変わるのは当たり前。その都度の本人の思いをしっかり伝えることが家族のためにもなる」(鎌田さん)
(第2回へ続く)
※女性セブン2024年3月28日号