故人・Tさんと交わした契約書の存在
酒井は2018年から2019年にかけて「建物明渡請求事件」と「損害賠償事件」の訴状で民事裁判を起こされた。裁判の大きな争点は酒井とTさんが交わしたとされる“幻の賃貸借契約書”だ。
「酒井さんが住んでいるアパートは20年以上前からX工業が所有している物件。裁判では原告側が『うちは一度も貸した覚えがない』と賃貸借契約がなかったことを主張するなか、酒井さんは返す刀で『Tさんと結んだ賃貸借契約書がある』と両者の意見が真っ向から食い違いました。
しかし酒井さんが賃貸契約書の実物を証拠として提出すると、一気に彼女が優勢になったようです。もちろん原告側も黙ってはおらず、契約書にはX工業の実印が使われていないことや、賃料が適正価格の約3分の1にあたる10万円しか払われていないことなど契約書の真正性をめぐって反論しました。
裁判は第二審まで行われたようですが、最終的に裁判官は『契約は結ばれていたと考えるのが自然であるし、契約書の真正を覆す客観的事実が不足している』と判断し、法子さんが勝訴しました」(前出・知人)
NEWSポストセブンが酒井とマネジメント契約を結んでいる事務所に問い合わせたところ「令和元年10月17日にX工業の請求を全部棄却する第一審判決が出され、令和2年5月27日にX工業の控訴を棄却する控訴審判決が出されました。その後、令和3年1月22日にX工業の上告を棄却し、上告受理申立を不受理とする最高裁判所の決定が出ております」と事実を認めた。
取材班が実際に確認した賃貸借契約書にはこのような特約が書かれていた。
〈居住者からの申し出がない限りは自動的に更新するものとする〉
2年以上に渡った裁判の末、酒井は“終の住処”を手にしたということか──。