国内

「子ども・子育て支援金」徴収額発表までのやり口は「嘘つき」の謗りを免れない

子育て政策に関する車座対話で政府の方針について説明する岸田文雄首相(左)。2023年7月31日、鳥取県日吉津村の子育て支援施設「ミライトひえづ」視察時(イメージ、時事通信フォト)

子育て政策に関する車座対話で政府の方針について説明する岸田文雄首相(左)。2023年7月31日、鳥取県日吉津村の子育て支援施設「ミライトひえづ」視察時(イメージ、時事通信フォト)

 日本が総中流社会と言われたのは過去のこと。今では格差があからさまになり、拡大する一方だ。貧富の差が大きくなると社会が不安定になり、治安の悪化にも繋がることから格差の解消を目指すのは日本の、いや世界の共通認識のはずだった。ところが、税や社会保険に関わる新しい施策は、ことごとく格差の拡大を狙っているように感じられるものばかりだ。人々の生活と社会の変化を記録する作家の日野百草氏が、「子ども・子育て支援金」の徴収額をめぐる人々の複雑な思いを聞いた。

 * * *
「年間1万円以上ですよ。増税と物価高で使えるお金が減っているのに、また国に騙された気分です」

 北関東、共働きの30代夫婦。語ってくれた男性の年収はおおよそ400万円、妻は200万円ということで2026年度から開始される「子ども・子育て支援金」では年間で12000円ほど徴収される(概算、後述)。

「子どもは欲しいですがいまはいません。やっぱり収入を考えると躊躇します。でも、他所の子どもでも大事だと思います」

 国は「異次元の少子化対策」を進めて来たが成果は上がらない。対策しても若者たちはそれこそ「躊躇」する。肝心の収入、とくに中間層、中間下位層全体の収入「使えるお金」が増えるどころか減り続けているからだ。「失われた30年」のダメージは大きい。

「でも納得できるかといえば、できませんね、嘘つかれたことが許せない」

 彼の言う「嘘」というのは岸田文雄首相が「子ども・子育て支援金」の徴収額を「月あたり500円弱」(年間6000円弱)と言い続けていたことにある。

 しかし実際は違った。徴収が本格化する2028年度の被雇用者(被用者保険の加入者)が徴収される額の概算が発表されているので以下に記す。また「月あたり」のみというのはどうにも数字のマジックのように思えるので「年あたり」も記す。

年収200万円=年間4200円(月350円)
年収400万円=年間7800円(月650円)
年収600万円=年間12000円(月1000円)
年収800万円=年間16200円(月1350円)
年収1000万円=年間19800円(月1650円)

 あくまで概算なので前後するだろうが、国の試算としてはこのような計算として発表された。世帯でなく一人当たり(被保険者ごと)で徴収されるため、この夫婦の場合は年一万円、夫婦とも年収400万円なら年間16200円が徴収される。仮に子なしの二世帯や全員が現役世代で対象となる収入であるなら世帯単位では相当額の徴収がなされることになる。

関連キーワード

関連記事

トピックス

二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
新たなスタートを切る大谷翔平(時事通信)
大谷翔平、好調キープで「水原事件」はすでに過去のものに? トラブルまでも“大谷のすごさ”を際立たせるための材料となりつつある現実
NEWSポストセブン
4月3日にデビュー40周年を迎えた荻野目洋子
【デビュー40周年】荻野目洋子 『ダンシング・ヒーロー』再ヒットのきっかけ“バブリーダンス”への感謝「幅広い世代の方と繋がることができた」
週刊ポスト
品川区で移送される若山容疑者と子役時代のプロフィル写真(HPより)
《那須焼損2遺体》大河ドラマで岡田准一と共演の若山耀人容疑者、純粋な笑顔でお茶の間を虜にした元芸能人が犯罪組織の末端となった背景
NEWSポストセブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【ケーキのろうそくを一息で吹き消した】六代目山口組機関紙が報じた「司忍組長82歳誕生日会」の一部始終
NEWSポストセブン
元工藤會幹部の伊藤明雄・受刑者の手記
【元工藤會幹部の獄中手記】「センター試験で9割」「東京外語大入学」の秀才はなぜ凶悪組織の“広報”になったのか
週刊ポスト
映画『アンダンテ~稲の旋律~』の完成披露試写会に出席した秋本(写真は2009年。Aflo)
秋本奈緒美、15才年下夫と別居も「すごく仲よくやっています」 夫は「もうわざわざ一緒に住むことはないかも」
女性セブン
小野寺さんが1日目に行った施術は―
【スキンブースター】皮下に注射で製剤を注入する施術。顔全体と首に「ジュベルック」、ほうれい線に「リジュラン」、額・目尻・頰に「ボトックス」を注入。【高周波・レーザー治療】「レガートⅡ」「フラクショナルレーザー」というマシンによる治療でたるみやしわを改善
韓国2泊3日「プチ整形&エステ旅行」【完結編】 挑戦した54才女性は「少なくとも10才は若返ったと思います!」
女性セブン
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
女性セブン
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
女性セブン
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
NEWSポストセブン