私、お芝居普通に好きだったんだ
玄人をうならせるデビューを飾り、2005年には天海祐希(56才)主演のドラマ『女王の教室』(日本テレビ系)で志田未来(30才)演じる主人公の友人でありながらいじめる側に回ってしまういじめっ子役が評価されたが、その後は伸び悩む時期もあった。
「『14ヶ月』が話題になり、出演作が続くと思っていたのにそうはならず、あれだけの輝きを見せてくれた彼女がなぜ……不思議でした」
もがき続ける伊藤に光が差したのはそれから7年後、2012年公開の映画『悪の教典』だ。同作で演じた女生徒はメインの登場人物ではなく、当時高校3年生だった伊藤はこのまま役者の道を進むかどうか進路に悩んでいた。しかし、家族と一緒に映画館で同作を鑑賞し、エンドロールに自分の名前が大きく流れた瞬間、うれしくなって芝居を続けようと決心したという。そのときの心境を伊藤は『キネマ旬報』(2020年11月15日号)でこう語っている。
《誰のために頑張っているのかわからなくなっていたけれど、『私、お芝居普通に好きだったんだ』と、自分の中で整理がついた瞬間でした》
役者一筋で生きると決めた伊藤は大学には進まず、アルバイトをしながらオーディションを受け続けた。本人いわく「ニート期間」を経て、2014年のドラマ『GTO』(フジテレビ系)などの話題作に徐々に出演するようになった。
「彼女がブレークしたハマり役は朝ドラ『ひよっこ』(2017年)で演じた米子でしょう。米屋の一人娘なのにお米が嫌いでパンが好き、自分の名前が気に入らず『さおり』と勝手に名乗る個性的なキャラクターをユーモラスに演じて圧倒的な存在感が光り、ターニングポイントとなったドラマです。デビュー作『14ヶ月』以降に出演した作品の一つひとつに爪痕を残し、その積み重ねが『ひよっこ』で花開きました」(木村さん)
同作で下剋上を果たして以降、ドラマや映画に引っ張りだことなり、朝ドラのヒロインに指名されるまで上り詰めた。
「彼女がそんなに恵まれた環境にいないことは、なんとなく聞いていました。でも、それを隠そうとも開き直ろうともせず、あくまで自然体。すべてを演技に変える天性を感じました。間違いなく日本を代表する役者になるでしょう。彼女の魅力や表現力には言葉を超える力があるので、ぜひ世界の舞台を目指してほしい」(山本さん)
不遇を乗り越え、翼を手にした「寅子」はどこまでも羽ばたいていくはずだ。
※女性セブン2024年5月2日号