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ジョブズの「愚か者であれ」をドヤ顔で言う大人ほど若手潰す

就活の現場では、さまざまなタイプの人材探しが始まっている。しかし、日本の会社にスティーブ・ジョブズは必要なのだろうか? 作家で人材コンサルタントの常見陽平氏が「普通の人」の大切さを説く。

* * *
激しい環境の変化により、企業の求める人物像は「神様スペック化」と揶揄されるほど高度化しています。グローバル人材、高度な技術を持つ理系人材、イノベーター人材への獲得意欲が高いのは相変わらずです。今日は、この中でもイノベーター人材の採用について考えてみたいと思います。

閉塞感を打破するためにも、イノベーションを起こすためにも、企業はイノベーター人材の採用に力を入れています。ゼロからイチを生み出すタイプの人材です。それこそ、学生団体を立ち上げるどころか、すでに起業している学生、とんでもないぶっ飛んだ研究をしている学生、組織の中で変革を起こせそうな尖った学生を企業は探しています。もっとも、そんな学生ばかりでは企業は成り立たないので、募集する数の5%~15%程度ではありますが。

「もはや、就職ナビサイトでは優秀な学生に出会えるとは思えない」と企業の人事担当者は言います。特にイノベーター人材はナビでは採用できないと企業も考えていて、尖ったプログラムのインターンシップ、企業が学生にアプローチする逆求人イベント、そんなタイプの学生が参加しそうなビジネスコンテストへの参加、ソーシャルメディアでのリストアップとアプローチ、内定者からの紹介、さらには大学への潜伏など、あらゆる手段を使ってこれらの人材を探しています。日本経団連の倫理憲章にサインした企業も、東証一部上場企業も、なりふり構わず水面下でこんな取り組みをしています。

もっとも、これらの尖った学生は、普通の面接官では理解できずに落としてしまったり、そもそも就職を志望しない、内定がいっぱい出るので逃げられる、さらには入社しても合わないと感じたら辞めていくなど、なかなか評価できない、確保できない、定着させることができないのも課題です。

そして、こういう人材は組織の中で潰されるのですよねぇ。

もうだいぶ時間が経ってしまいましたが、スティーブ・ジョブズ氏が亡くなりました。ご冥福をお祈りいたします。ちょうど、死が発表されたその日に銀座のアップルストアに行きました。店の前にはたくさんの人が。そして、花束とリンゴが。感極まる光景でした。

一方、ここ数週間、ソーシャルメディアのTLでは彼の”Stay hungry,Stay foolish.”(ハングリーであれ、愚か者であれ)という名言でいっぱいでした。複雑な心境になりました。皆さん、これ、実践していますかね? こういうことをドヤ顔で受け売りするオトナに限って職場で若手社員を潰していたりするわけです。

貴社にスティーブ・ジョブズは、必要ですかね? いや、誰でも「これからはイノベーターだ!」「なんで日本にはジョブズがいないんだ」っていう話をするわけですが、あなたの部下、後輩がジョブズだったら、どうします?

神様スペック採用もいいですけど、普通の人をどう育て、化けさせ、活躍させるかも考えたいところです。それこそ、イチローだってドラフト4位で、彼が小学生の頃に行きたいと言っていた中日でも西武でもなくオリックスでしたしね。

そんな、普通の人でも活躍して欲しいという願いを込めて、新作を発表します。『就活の神さま』(WAVE出版)という、就活をテーマにした青春小説です。非モテ、非リア充、頑張った経験なしの主人公が、バイト先の謎のマスターのもとで就活修行をする物語です。魂かけたので、手にとってください。普通の人の可能性にかけましょう。

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