国内

漁業補償は「ゴネ得」 これがあるため風力発電難しいとの指摘

 太陽光発電とともに期待が高まっている自然エネルギーが風力発電だ。だが、大前研一氏によれば、日本の風力発電には「漁業権」の問題が発生して高額な漁業補償が必要になり、コストがどれだけ膨れ上がるか見当がつかないという。以下、大前氏の解説だ。

 * * *
 風力発電は大きな問題を抱えている。日本の風力発電の風車は山の上に設置されていることが多いが、本格的に推進するならデンマークやフランスのように海上に建設しなければならない。

 しかし、日本には遠浅の海岸が非常に少ないので、基本的に風車は海岸近くの洋上に建設せざるを得ない。そうすると「漁業権」の問題が発生して高額な漁業補償が必要になり、コストがどれだけ膨れ上がるか、見当がつかなくなってしまうのだ。

 たとえば、NTTが瀬戸内海の小島まで電話線を敷設するため、途中の海上に電柱を1本建てなければならなくなったことがある。すると、電話線の敷設は島民たちの要望であるにもかかわらず、彼らは漁業補償を要求したのである。その額は数億円レベルだった。

 また、関西国際空港を建設した際は、大阪、和歌山、兵庫、徳島の漁民に合計1000億円以上の漁業補償を行なっている。その最大の理由は「空港島を造るとハマチの回遊路が変わる」というものだった。

 実際にはわからないが、変わるかもしれないということで、淡路島を挟んだ対岸の徳島の漁民にまで、漁業補償金を支払ったのである。当時、私が関係者から聞いた補償金額は、船1隻あたり1500万円だった。

 しかし、関空が開業した結果、本当にハマチの回遊路が変わって漁獲量が1500万円分減ったかどうか、農水省は何も検証していない。つまり、漁業補償は“ゴネ得料”であり、電柱であれ、空港であれ、風車であれ、海上に構造物を建設したら、その数や規模に比例して、どこまでも補償範囲が拡大していくのである。

※週刊ポスト2012年3月16日号

関連キーワード

トピックス

前号で報じた「カラオケ大会で“おひねり営業”」以外にも…(写真/共同通信社)
中条きよし参院議員「金利60%で知人に1000万円」高利貸し 「出資法違反の疑い」との指摘も
NEWSポストセブン
中日に移籍後、金髪にした中田翔(時事通信フォト)
中田翔、中日移籍で取り戻しつつある輝き 「常に紳士たれ」の巨人とは“水と油”だったか、立浪監督胴上げの条件は?
NEWSポストセブン
二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
新たなスタートを切る大谷翔平(時事通信)
大谷翔平、好調キープで「水原事件」はすでに過去のものに? トラブルまでも“大谷のすごさ”を際立たせるための材料となりつつある現実
NEWSポストセブン
品川区で移送される若山容疑者と子役時代のプロフィル写真(HPより)
《那須焼損2遺体》大河ドラマで岡田准一と共演の若山耀人容疑者、純粋な笑顔でお茶の間を虜にした元芸能人が犯罪組織の末端となった背景
NEWSポストセブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【ケーキのろうそくを一息で吹き消した】六代目山口組機関紙が報じた「司忍組長82歳誕生日会」の一部始終
NEWSポストセブン
元工藤會幹部の伊藤明雄・受刑者の手記
【元工藤會幹部の獄中手記】「センター試験で9割」「東京外語大入学」の秀才はなぜ凶悪組織の“広報”になったのか
週刊ポスト
映画『アンダンテ~稲の旋律~』の完成披露試写会に出席した秋本(写真は2009年。Aflo)
秋本奈緒美、15才年下夫と別居も「すごく仲よくやっています」 夫は「もうわざわざ一緒に住むことはないかも」
女性セブン
小野寺さんが1日目に行った施術は―
【スキンブースター】皮下に注射で製剤を注入する施術。顔全体と首に「ジュベルック」、ほうれい線に「リジュラン」、額・目尻・頰に「ボトックス」を注入。【高周波・レーザー治療】「レガートⅡ」「フラクショナルレーザー」というマシンによる治療でたるみやしわを改善
韓国2泊3日「プチ整形&エステ旅行」【完結編】 挑戦した54才女性は「少なくとも10才は若返ったと思います!」
女性セブン
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
女性セブン
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
女性セブン