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原発帰村宣言の村「健康被害出たら誰が責任持つ」に村長苦悩

「帰村を決断するまでに、毎日悩み、苦しみました。村民なら誰でも早く村に戻りたい。でも戻って大丈夫なのか、そんな自問自答の繰り返しでした」

 こう振り返るのは、福島第一原発事故で福島県郡山市に移転していた村役場を、4月1日に元に戻すと宣言した福島県川内村の遠藤雄幸村長である。役場を他の市や町に移した9つの町村の中で、元に戻すのは初めてのケースだ。遠藤村長は村民約3000人に対して、避難先から村へ帰るように促している。

 福島第一原発から30kmの範囲内にある川内村では、昨年3月16日、遠藤村長が村議会などと協議して「全村避難」を指示。翌月には20km圏内が警戒区域に、30km圏内が緊急時避難準備区域に指定された。以来、遠藤村長も多くの村民の避難先である郡山市の避難所に移り、村民と寝起きを共にしてきた。

「帰村宣言」を行なったのは1月末。一見すると唐突のように思えるが、周到に準備してきたのだと言う。

「帰村計画や復興ビジョンを描いたのは昨年6~7月頃でした。それが一気に具体化したのは、昨年9月末に緊急時避難準備区域が解除されてからです。除染の徹底化を図れば、必ず帰村できると確信したのです。この間、診療所や学校、公共施設の再開、ライフラインの確保など、村民の帰村に向けて準備をしてきました」

 もちろん、村民の間からは帰村するのは時期尚早ではないかとの異論もあった。確かに低線量であっても、被曝すれば体にどんな影響が出るかは、専門家によって意見が異なり、判断する基準が明確でないのも事実だ。

「放射線量がゼロでないから心配だ」

「もし将来、健康被害が出たら誰が責任を持つんだ?」

 遠藤村長は苦悩煩悶した。折れそうになった村長の心を支えたのは、「早く生まれ故郷に帰りたい、村長さん、何とかして下さい」という、県外避難の村民たちからの切実な手紙だった。 

 彼らの望郷の念に思いを馳せつつ、連日のように村民と顔を突き合わせながら、話し合いを重ねた。そうするうちに帰村に疑心暗鬼だった多くの村民の理解が得られるようになっていった。村に帰るかどうかは各自の判断に委ねられているが、帰村のために身を粉にしてきた遠藤村長の努力は実を結ぼうとしている。

「帰村する人、しない人、迷っている人、村民の間にさまざまな考えがあります。早急に結論を求めず、それぞれの意思を尊重したい」(遠藤村長)

 震災と原発事故に翻弄されて1年。ようやく川内村は復興に向けて歩み始めた。

※SAPIO2012年4月4日号

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