ビッグスター、超人気アイドルをキャスティングしたドラマですら数字が獲れないそんな時代。平均13%以上という安定視聴率を誇り、さらに民放連賞最優秀賞まで獲った話題のバラエティー番組『ほこ×たて』(フジテレビ系)。
最も迫力ある対決といえば、「どんな物でも破壊する鉄球」シリーズ。特注の解体用の鉄球に、絶対に破壊されない壁やバリケードが立ちふさがる。制限時間内に破壊できるか、できないかで勝負する。
鉄球にいつも付き添い、「魂がこもったものは絶対負けない」と熱く語るのは、鉄球の生みの親・吉田秀夫さん(64才)。吉田さんは、鋳物の街として知られる埼玉・川口市の「富和鋳造」の工場長として、この鉄球を作り上げた。その重さはなんと5t。2台の巨大クレーン車を使わないと、扱えない代物だ。
「解体作業で鉄球を使っていたのはずいぶん昔の話で、私もしばらく手がけたことがなかった上に、あれだけの大きな球を、バランス良く作るのは難しかったですね」(吉田さん・以下同)
第1戦の相手は、絶対に破壊されない壁。何層にも組まれた壁を徐々に突き崩す方法で、制限時間ギリギリの34投目にぶち抜いて勝利。続く第2戦の相手は棒状のバリケード。テロ対策用の特注品で、車が衝突しても折れない頑丈さを誇っていたが。
「対決会場ではじめて見て、驚きました。あんなに細いものとは思わなかったので。鉄球三銃士(吉田さんと解体業の新井悦男さん、クレーン操縦の田口優一さんのチーム)でどうしたら倒せるかを検討しました。でも、バリケードの真ん中に、鉄球の真芯が当たれば、必ず倒れる。そう信じていたので、迷いはなかった。日頃やっている鋳物作りは一発勝負ですから、そういう勝負勘みたいなものは、日々鍛えられていると思うんですよ」
第2戦も勝利した鉄球は、第3戦で最新鋭の解体用強力鉄骨切断機と、どちらが「最強の破壊王」かを賭けて対決し、またも勝利。勝利を重ねるたびに、鉄球と吉田さんは街のヒーローになっていく。地元・川口の祭りに鉄球を展示した吉田さんは、子供たちに囲まれ握手攻めにあったという。
「この鉄球は、完全な球体に近いため、高いところから落とすと、スッとまっすぐに落ちる。業界関係者が番組を見れば、製造技術の高さに気づいてもらえるんです。だから、番組に出演して以降は、“こんなものを作れませんか?”という問い合わせが増えて、注文にもつながりました。鋳物のすごさ、川口の技術力を全国に認めてもらえたのは、うれしかったですね」
※女性セブン2012年11月22日号