芸能

朝ドラ「純と愛」遊川氏の脚本は物語単調化のリスク孕むとの評

 鳴り物入りでスタートしたNHKの朝ドラ。全体の1/3が経過した現在まで、視聴率は好調をキープしているが、不安がないわけではないようだ。作家で五感生活研究所の山下柚実氏が指摘する。

 * * *
 遊川和彦氏が脚本を手がけて話題を集めているNHK連続テレビ小説「純と愛」。賛否両論が渦巻く中、直近の視聴率は18.4%(ビデオリサーチ 11月12日~18日)と、視聴者の関心は離れません。ヤフーみんなの感想・掲示板にも、たった2ヶ月間ですでに1万8千件近い投稿が。「朝ドラの常識を壊す」と宣言した遊川氏の思惑通り、といったところでしょう。

 ドラマの開始後に執筆したコラムの中で、私は「まずは配役成功」と書きました。さてさて開始から丸2ヶ月が過ぎ……。1/3が終わった今、ドラマの途中経過を検証してみたいと思います。

「純と愛」というドラマの特徴は、まず、「人の本性が見えてしまう」という愛に代表される、「奇妙な人物設定」にあるでしょう。不気味な印象を放つ愛の家族、ニコリとも笑わない上司、キザに徹した社長。個性的なキャラクターの輪郭がくっきり際立つ。

 脚本にあわせ、役者への演技指導、演出ぶりも徹底しています。純は腹の底から叫ぶ。鬼母は躊躇なく力込めて頬をはたく。キザ社長は色気たっぷりにウインクする。完全なカリカチュア。実にお芝居的。演劇的に仕上げられているテレビドラマと言ってもいいでしょう。

 日常ではあり得ない極端な人物造形。それは、フィクションの世界を作るためのガソリンであり、エンジンです。 ありえないような虚構世界の中で、しかし、ふとしたセリフがリアルに伝わってくるのが芝居というものの面白さ。ということで、過剰な脚本と演出は、ここまでは成功している、と言える。

 そうした仕掛けの向こうに、「人が人を愛するということ」「夢を抱き続けながら生きること」という、素朴で普遍的なテーマが横たわっています。そのあたりの骨格づくりも、ニクいほど成功しています。

 ただし、2ヶ月が経過して、難点も見えてきました。ざっくり、2つあげておきます。

 1つは、愛に「何でもかんでもすべての解答を知っている」という、スーパーマン的な役回りを与えていること。

 どんな相手でも、愛がいったんその顔さえ見れば潜んでいる難問も解き方もすべてがわかってしまう設定。いつまでもこの設定で押し通すのは、危険です。これから4ヶ月も続く物語を、単調にしてしまいかねないリスクです。ことが起こり愛が答を出す、という「パターン」の繰り返しが、そのうち視聴者に飽きられてはしまわないでしょうか?

 もう1つの難点。

 それは、本筋の「二人で力を合わせて沖縄に魔法のホテルを作る」という「夢の実現」をなかなか進展させないでいる今。ドラマが単なるドタバタ劇に見えてしまうことです。

 結婚式場のトラブル、ストーカーなどの脇のエピソードは、長丁場にメリハリを付けようとする「ねらい」かもしません。しかしその枝葉の中味が、実に粗雑に感じられるのです。とってつけたご都合主義、短絡的なエピソードに。本筋からの逃げをこれ以上続けられるのは、私としてはちょっと耐えられない。

「純と愛」の思い切った虚構世界に魅入られ、最後まで観続けたい、と切に願っているファンの一人だからこそ、そう言わざるを得ない気持ちです。私の取り越し苦労であればいいのですが。これからのドラマの展開を眺めつつ、また検証してみたいと思います。

関連キーワード

関連記事

トピックス

森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
女性セブン
どんな演技も積極的にこなす吉高由里子
吉高由里子、魅惑的なシーンが多い『光る君へ』も気合十分 クランクアップ後に結婚か、その後“長いお休み”へ
女性セブン
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
NEWSポストセブン
わいせつな行為をしたとして罪に問われた牛見豊被告
《恐怖の第二診察室》心の病を抱える女性の局部に繰り返し異物を挿入、弄び続けたわいせつ精神科医のトンデモ言い分 【横浜地裁で初公判】
NEWSポストセブン
バドミントンの大会に出場されていた悠仁さま(写真/宮内庁提供)
《部活動に奮闘》悠仁さま、高校のバドミントン大会にご出場 黒ジャージー、黒スニーカーのスポーティーなお姿
女性セブン
『教場』では木村拓哉から演技指導を受けた堀田真由
【日曜劇場に出演中】堀田真由、『教場』では木村拓哉から細かい演技指導を受ける 珍しい光景にスタッフは驚き
週刊ポスト
日本、メジャーで活躍した松井秀喜氏(時事通信フォト)
【水原一平騒動も対照的】松井秀喜と全く違う「大谷翔平の生き方」結婚相手・真美子さんの公開や「通訳」をめぐる大きな違い
NEWSポストセブン
足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン