国際情報

習近平政権の足元揺るがす三勢力 地下労組、農民、退役軍人

 格差社会に対する不満など、一触即発の中国国内情勢で“火種”となるのはどのような勢力か。現代中国研究家の楊中美氏が解説する。

 * * *
 経済格差が急拡大する中国で、習近平政権の足元を揺るがすと見られているのは次の三つの勢力である。

 一つは共産党非公認の地下労組だ。中国では労働組合(工会)はすべて共産党の指導の下で活動しており、独立した労働組合運動は原則禁止されている。

 ところが2000年前後から外資系企業の工場で働く出稼ぎ農民らがストライキを行なって賃上げを要求するようになった。その多くは知識人や民主活動家などからなる地下労組が指導している。こうした動きは外資系企業から中央や地方の国営企業に飛び火しつつある。

 現在中国の出稼ぎ農民は約2億3000万人。地下労組が彼らを組織化できれば、1980年代のポーランド民主化運動で、ワレサ氏が率いた独立自主管理労組「連帯」のような大勢力に発展し、政権と全面対峙する存在になるのは必至である。

 二つ目は土地を奪われた農民だ。中国では農村の急速な都市化が進み、年間1000万人以上の農民の土地が開発用地に転用されている。それに伴いトラブルが急増し、あちこちで暴動が起きている。広東省烏坎村では地元政府役人らが農民の土地の権利を無断で開発業者に売却。激怒した村民が激しい抗議行動を行ない、役人を辞任に追い込んだ。

 こうした農民による反乱が一地方にとどまらず、全国規模で同時多発的に広がれば、習近平体制は危機に直面する。中国には7億人の農民がいる。彼らが一斉蜂起すれば、人民解放軍が鎮圧するのは不可能である。

 そして政権にとって最も怖い勢力が三つ目の退役軍人である。トウ小平時代の1980年代に約150万人、1990年代の江沢民時代に約80万人、胡錦濤時代に約30万人の人民解放軍兵士がリストラされた。トウ小平時代以前を含めると、退役軍人は300万人前後と推定される。

 退役軍人は旧来の待遇の大幅な見直しを主張。2007年以降の基準に応じた退役手当、住宅、仕事などを要求しているのだ。しかし共産党は彼らを満足させる新たな基準を打ち出すことができず、退役軍人の怒りは爆発寸前の状態にある

※SAPIO2013年1月号

関連キーワード

トピックス

【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
女性セブン
どんな演技も積極的にこなす吉高由里子
吉高由里子、魅惑的なシーンが多い『光る君へ』も気合十分 クランクアップ後に結婚か、その後“長いお休み”へ
女性セブン
『教場』では木村拓哉から演技指導を受けた堀田真由
【日曜劇場に出演中】堀田真由、『教場』では木村拓哉から細かい演技指導を受ける 珍しい光景にスタッフは驚き
週刊ポスト
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
NEWSポストセブン
わいせつな行為をしたとして罪に問われた牛見豊被告
《恐怖の第二診察室》心の病を抱える女性の局部に繰り返し異物を挿入、弄び続けたわいせつ精神科医のトンデモ言い分 【横浜地裁で初公判】
NEWSポストセブン
バドミントンの大会に出場されていた悠仁さま(写真/宮内庁提供)
《部活動に奮闘》悠仁さま、高校のバドミントン大会にご出場 黒ジャージー、黒スニーカーのスポーティーなお姿
女性セブン
日本、メジャーで活躍した松井秀喜氏(時事通信フォト)
【水原一平騒動も対照的】松井秀喜と全く違う「大谷翔平の生き方」結婚相手・真美子さんの公開や「通訳」をめぐる大きな違い
NEWSポストセブン
足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
各局が奪い合う演技派女優筆頭の松本まりか
『ミス・ターゲット』で地上波初主演の松本まりか メイクやスタイリングに一切の妥協なし、髪が燃えても台詞を続けるプロ根性
週刊ポスト
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン