国際情報

中国ゴミ焼却炉至近の村 脳性麻痺の子ら生まれ村民が訴訟も

 中国で深刻な大気汚染を引き起こし、日本にも飛来してくる微小粒子物質PM2.5。工場のばい煙や車の排ガスなどによって発生する微小な粒子で、肺がんや呼吸器疾患のリスクを高める可能性があるという。粒子には発癌性のある化学物質が含まれるが、そのなかでも専門家らが警戒するのはダイオキシンだ。

 中国の生活ゴミ排出量は年間3億トンに達する。そのうち無害化処理されるのは1億5700万トンにすぎない。中国の研究機関が2009年にまとめた調査では、2007年に中国全土の生活ゴミから発生したダイオキシンは608グラムTEQ(ダイオキシンの毒性を表わす数値)とされる。これは日本の6~7倍にあたる数値だ。

 ただし、このデータは今から6年前の数値であり、お国柄を考えれば調査結果には何らかのバイアスがかかっている可能性もある。実際の汚染度は未知数だ。

 大阪摂南大学薬学部の宮田秀明教授が語る。

「ダイオキシンが発がん性を持つことは広く知られていますが、近年の研究から懸念されているのは胎児への影響です。妊娠中の母親からダイオキシンを摂取した胎児は脳の発育や免疫関係に障害がでることが分かってきた。胎児への影響は大人の10倍強いとされます」

 実際、中国東部・江蘇省のゴミ焼却施設から190メートルほどの距離にある村では、脳性麻痺などの障害をもつ子供が生まれ、村民が訴訟を起こしている。

「PM2.5が問題なのは肺の奥深くまで入りこむため、付着した有害物質が血液にまで流れこんでしまうこと。通常、気道に入った異物は痰として体外に排出されますが、PM2.5に付着したダイオキシンは小さすぎてそれができない」(同前)

 目に見えない微小粒子だからこそ蓄積量も自覚できない。現時点では、PM2.5への対策も限られている。

「マスクは花粉用では役にたちません。病院などで手術の際に使うサージカルマスクや、粒子状物質を吸着するような活性炭が入ったマスクでないとPM2.5は防げない。喘息などの呼吸器疾患を持つ方や、妊婦の方はなるべく外出を控えたほうがいいでしょう」(同前)

※週刊ポスト2013年3月1日号

関連キーワード

トピックス

エンゼルス時代、チームメートとのコミュニケーションのためポーカーに参加していたことも(写真/AFP=時事)
《水原一平容疑者「違法賭博の入り口」だったのか》大谷翔平も参加していたエンゼルス“ベンチ裏ポーカー”の実態 「大谷はビギナーズラックで勝っていた」
週刊ポスト
グラビアから女優までこなすマルチタレントとして一世を風靡した安田美沙子(本人インスタグラム)
《過去に独立トラブルの安田美沙子》前事務所ホームページから「訴訟が係属中」メッセージが3年ぶりに削除されていた【双方を直撃】
NEWSポストセブン
中条きよし氏、トラブルの真相は?(時事通信フォト)
【スクープ全文公開】中条きよし参院議員が“闇金顔負け”の年利60%の高利貸し、出資法違反の重大疑惑 直撃には「貸しましたよ。もちろん」
週刊ポスト
阿部詩は過度に着飾らず、“自分らしさ”を表現する服装が上手との見方も(本人のインスタグラムより)
柔道・阿部詩、メディア露出が増えてファッションへの意識が変化 インスタのフォロワー30万人超えで「モデルでも金」に期待
週刊ポスト
昨秋からはオーストラリアを拠点に練習を重ねてきた池江璃花子(時事通信フォト)
【パリ五輪でのメダル獲得に向けて】池江璃花子、オーストラリア生活を支える相方は元“長友佑都の専属シェフ”
週刊ポスト
店を出て並んで歩く小林(右)と小梅
【支払いは割り勘】小林薫、22才年下妻との仲良しディナー姿 「多く払った方が、家事休みね~」家事と育児は分担
女性セブン
大の里
新三役・大の里を待つ試練 元・嘉風の中村親方独立で懸念される「監視の目がなくなる問題」
NEWSポストセブン
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン
「特定抗争指定暴力団」に指定する標章を、山口組総本部に貼る兵庫県警の捜査員。2020年1月(時事通信フォト)
《山口組新報にみる最新ヤクザ事情》「川柳」にみる取り締まり強化への嘆き 政治をネタに「政治家の 使用者責任 何処へと」
NEWSポストセブン
愛子さま
【愛子さま、日赤に就職】想定を大幅に上回る熱心な仕事ぶり ほぼフルタイム出勤で皇室活動と“ダブルワーク”状態
女性セブン
行きつけだった渋谷のクラブと若山容疑者
《那須2遺体》「まっすぐ育ってね」岡田准一からエールも「ハジけた客が多い」渋谷のクラブに首筋タトゥーで出没 元子役俳優が報酬欲しさに死体損壊の転落人生
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 岸田自民「補助金バラ撒きリスト」入手ほか
「週刊ポスト」本日発売! 岸田自民「補助金バラ撒きリスト」入手ほか
NEWSポストセブン