国内

ハイサワーの3代目美人社長「酒免許」取得の大変さに驚いた

ハイサワーで100年企業を目指す博水社の田中秀子社長

 博水社と聞いて飲料メーカーと即答できる人は少ないかもしれないが、「わ・る・な・ら・ハイサワー」のCMが流れればピンと来るはず。1980年に焼酎を加えてサワーを作る“割り材”を発売。これまで全29種類、約15億本ものハイサワーを販売してきた。

 そして、創業から85年を迎えた今年、割る必要のない缶チューハイ『ハイサワー缶 レモンチューハイ』でアルコール市場に初参入した。満を持してというよりも、なぜ今までお酒を出さなかったのかが不思議なくらいだ。博水社3代目の美人社長、田中秀子さんに缶チューハイ誕生までの秘話を語ってもらった。

* * *
――そもそも「ハイサワー」自体をお酒だと勘違いしている人が多い。

田中:「ハイサワーを1本飲んでも全然酔わないぞ!」なんてクレームは、いまだにあります。博水社は私の祖父が品川で創業したラムネの製造販売業がルーツ。れっきとした清涼飲料水メーカーでした。でも、お酒メーカーだと思われるのは仕方のないことですよね。外でハイサワーを注文すれば、飲み屋のママさんが作ってお酒として出てくるわけですから。

――アルコール入りハイサワーを出してほしいという要望は根強かったのでは?

田中:はい。特にアウトドアでお酒を飲むような場合、キャンプや花見に出掛けるのに、大きなボトルのハイサワーと焼酎、コップやかき混ぜるマドラーまで持参するのは荷物になりますからね。氷を買うのも大変ですし。

――では、缶チューハイの発売は長年の悲願だった。

田中:缶チューハイは巨大なビールメーカーもひしめく大手市場です。私の中では戦艦大和が大手さんだとすれば、ウチは公園に浮かぶ小舟ほどの存在。そんな中でチューハイを出しても、店頭には並べてもらえないし、飲んでもらえないという気持ちが強かったんです。だから、正式に発売しようと動き出したのは、昨年からです。

――それでも、勝負に打って出ようと決めた。

田中:大手さんの缶チューハイは、レモンがだめならブドウ、キウイ、桃……と次々にフレーバーを変えて販売できますが、ウチは小規模な会社なので企業体力はないし、広告宣伝費も多くかけられません。まずは、いちばん自信のある王道のレモン1品だけ。しかも、販売エリアも関東限定からコツコツ売っていこうと決めました。本当は目黒(博水社の本社所在地)限定にしたかったくらいなんです(笑い)。

 新商品発表会でも新聞記者さんからこんな質問がありました。「田中さんね、大手がやっている商品と同じものを作って、勝算があると思いますか?」って。もちろん大手さんと肩を並べて戦おうなんて思っていませんし、そもそも勝てるはずがありません。

 でも、ハイサワーを長年飲んでくださっているファンはいますし、イタリアシチリア産のレモンを果肉の真ん中だけ絞る贅沢なレモン果汁が売り。その記者さんには「ウチはウチなんで、良かったら味見してください」とお答えしました。

――なにはともあれ、酒類販売にこぎつけた。感慨もひとしおでは?

田中:去年1年間は税務署やら法務局やらに通い続け、お酒の製造免許を取るのがこれほど大変なことだとは思いませんでした。どこでどうやってお酒を作るのか、それを保管する倉庫の場所はどこで、何メートル四方に置くのか……、とにかくチェックが厳しかった。「この場所は本当に存在するんですか?」なんて聞かれたりして。ウソなんかついても仕方ないのに。

 晴れて免許が下りた9月某日。税務署の奥の部屋に通されて、署長さんやら副署長さんらが居並ぶ物々しい雰囲気の中、免許の交付状をしっかり両手で受け取りました(苦笑)

――2月5日の発売以降、初年度約580万本の売り上げを目指して、出足は好調か。

田中:おかげさまで、大手コンビニ各社にも何段階かに分けて置いてもらえることになっていますし、なによりも地元の酒屋さんがいちばん喜んでくれました。「缶チューハイ出したなら、そのへんに並べておくから持ってきな」と。やっぱり地元はありがたいですね。

 それから、意外だったのは、競輪場やストリップ劇場からも注文がきたことです。立ってお酒を飲む場所に需要が多かったことに改めて気付きましたね。

【田中秀子/たなか・ひでこ】
1960年東京生まれ、52歳。山脇女子短期大学卒業後、1982年に祖父の故・田中武雄氏が創業した博水社に入社。清涼飲料水や酒の知識を得るために東京農業大学の食品醸造学科で勉強をやり直しながら、製造管理や新商品企画などに従事。2008年4月創業80周年を機に3代目社長に就任し、現在に至る。

【撮影】渡辺利博

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