芸能

「本気で見たいドラマは録画」が定着し映画鑑賞の代行化が進行

 視聴率低下が叫ばれ、テレビ離れが危惧される昨今だが、作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏は必ずしもそうは感じていない。テレビの愉しみ方が変わってきているのではないか、と指摘する。

 * * *
 3月に入り、冬ドラもいよいよ佳境にさしかかる時期です。熱心に見ている人が多いな、と感じるわりには視聴率が伴わない。10%台前半のドラマが多くて、地味な数字が何だか不思議。

 ところが、「『最高の離婚』と『夜行観覧車』は録画再生率も含めると実質視聴率は30%に達するのでは?」と朝日新聞が報じたとか。やっぱりね。同感と、うなずいた人も多いのではないでしょうか?

 これまで視聴率というものは、放映時のリアルタイム視聴をカウントしてきました。それが、お茶の間の視聴実態とズレているのではないか? 実態を正確に把握できていないのではないか?
と指摘され、議論を呼んでいます。

「夜10時からの番組は録画して見ている若年層も多いため、その数字を加えないまま“つまらないドラマ”との烙印を押されるのは納得いきません」(NEWSポストセブン 2013.3.5)という制作関係者の声も。ビデオリサーチ社調べの視聴率の“妥当性”については、今後ますます議論になっていくでしょう。

 たしかに。周囲を見回してみれば、うなずける。ハードディスクへの録画はボタン一つで完了。前にくらべてものすごく簡単。そのため、「本気で見たいものは録画」という流れが定着しつつあるのではないでしょうか。

 ドラマを録画して後で見る、という「隠れ視聴者」が私のまわりにもたくさんいます。

「『夜行観覧車』は必ず録画して見ているわよ。仕事も食事もお風呂もすべて終わって、ゆっくりできる夜の時間帯に、録画しておいたドラマをじっくりと一人で楽しむの」というのは、知人の弁。

 部屋の照明は落とし気味にし、携帯電話はオフ、トイレを済ませる。すべては画面に集中するための環境整備だそうです。そして、好きなお酒を用意して、いざ再生スタート。

「誰にも邪魔されないこの時間がとても好き。最高の娯楽タイム」と彼女は言います。

 バラエティやワイドショーは「ながら見」でいい。けれどドラマは別。しっかりと集中して見たい。誰にも邪魔されずに没入したい。それだけ真剣に対峙している、とも言える。もしかしたら、テレビドラマに対する向き合い方の密度は、以前よりも上がってきている、と言えるのかもしれません。

 今の時代、ネットや携帯に流れこむ情報はみんな細切れで断片化している。お笑い番組はマンネリ化し見飽きた。だからこそ、連続ドラマが人々の共感を創り出し、感情を重ね合わせる娯楽の役割を担う。私はこれまでにもそんな指摘をしてきました。

 知り合いの話を聞きながら、ドラマを見ているシーンが「何かに似ているな」と感じたのです。

 あっ、そうだ。昔の映画館だ。暗い館内で、脇目もふらずに銀幕をみつめる。登場人物に自分自身を重ねあわせ、感情移入し涙を流したり笑ったり。映画のスクリーンの上には、激しい生き様や人生、純粋な愛が浮かび上がっていました。

 映画館で上映されてきたそうした映画の役割を、今新たに、テレビドラマが担い始めているとは言えないでしょうか?

 デジタル放送+ハードディスクという技術革新が、お茶の間に「変化」をもたらした。

 同時に、何度でも向き合うことができる秀逸な作品がドラマの中に育ってきている。テレビドラマが、かつての映画に比する「娯楽コンテンツ」の地位を占めつつある。一過性の消費財として消えていくのではない。繰り返しの鑑賞に堪え「作品」として命を永らえていく。ドラマをめぐって、そんな条件が整ってきた時代なのでしょう。

関連記事

トピックス

エンゼルス時代、チームメートとのコミュニケーションのためポーカーに参加していたことも(写真/AFP=時事)
《水原一平容疑者「違法賭博の入り口」だったのか》大谷翔平も参加していたエンゼルス“ベンチ裏ポーカー”の実態 「大谷はビギナーズラックで勝っていた」
週刊ポスト
グラビアから女優までこなすマルチタレントとして一世を風靡した安田美沙子(本人インスタグラム)
《過去に独立トラブルの安田美沙子》前事務所ホームページから「訴訟が係属中」メッセージが3年ぶりに削除されていた【双方を直撃】
NEWSポストセブン
中条きよし氏、トラブルの真相は?(時事通信フォト)
【スクープ全文公開】中条きよし参院議員が“闇金顔負け”の年利60%の高利貸し、出資法違反の重大疑惑 直撃には「貸しましたよ。もちろん」
週刊ポスト
阿部詩は過度に着飾らず、“自分らしさ”を表現する服装が上手との見方も(本人のインスタグラムより)
柔道・阿部詩、メディア露出が増えてファッションへの意識が変化 インスタのフォロワー30万人超えで「モデルでも金」に期待
週刊ポスト
昨秋からはオーストラリアを拠点に練習を重ねてきた池江璃花子(時事通信フォト)
【パリ五輪でのメダル獲得に向けて】池江璃花子、オーストラリア生活を支える相方は元“長友佑都の専属シェフ”
週刊ポスト
店を出て並んで歩く小林(右)と小梅
【支払いは割り勘】小林薫、22才年下妻との仲良しディナー姿 「多く払った方が、家事休みね~」家事と育児は分担
女性セブン
大の里
新三役・大の里を待つ試練 元・嘉風の中村親方独立で懸念される「監視の目がなくなる問題」
NEWSポストセブン
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン
「特定抗争指定暴力団」に指定する標章を、山口組総本部に貼る兵庫県警の捜査員。2020年1月(時事通信フォト)
《山口組新報にみる最新ヤクザ事情》「川柳」にみる取り締まり強化への嘆き 政治をネタに「政治家の 使用者責任 何処へと」
NEWSポストセブン
愛子さま
【愛子さま、日赤に就職】想定を大幅に上回る熱心な仕事ぶり ほぼフルタイム出勤で皇室活動と“ダブルワーク”状態
女性セブン
行きつけだった渋谷のクラブと若山容疑者
《那須2遺体》「まっすぐ育ってね」岡田准一からエールも「ハジけた客が多い」渋谷のクラブに首筋タトゥーで出没 元子役俳優が報酬欲しさに死体損壊の転落人生
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 岸田自民「補助金バラ撒きリスト」入手ほか
「週刊ポスト」本日発売! 岸田自民「補助金バラ撒きリスト」入手ほか
NEWSポストセブン