ビジネス

32歳人気企業社員 ノマドより「2枚目の名刺」持つこと推奨

民放キー局に勤めながら「2枚目の名刺」を持つ柳内啓司さん

 サラリーマンとして会社に勤めながら、“2枚目の名刺”を持って、社外でもビジネスを行う人たちが増えている。大手民放キー局の社員で、いくつかの社外活動を行う柳内啓司さん(32)もその一人だ。『人生が変わる2枚目の名刺 パラレルキャリアという生き方』の著者である柳内さんに、ノマドとも違い、従来の「副業」の枠も超えているという、2枚目の名刺を持つ働き方について聞いた。

 * * *
――柳内さんは、本業とは別に、どんな活動をされているのですか?

柳内:人と人を結びつける交流会や、ビジネスの勉強会を主催しています。それぞれ月1回の開催が基本ですね。もともと、人に会ったり、人をつなげたりするのが好きだったんです。勉強会には、いま旬の人を招くなどしています。約3年続いていて、年間1,000人以上を動員するまでに成長しました。

――本業以外の仕事をされるようになったきっかけは何だったのですか?

柳内:会社で働くようになって、組織の良さと、反面、組織ゆえにできないことがあることを痛感しました。テレビ局の看板を背負っているからこそ、できる仕事がある。一方で、大組織ゆえに、決済に時間がかかってなかなか物事が進まなかったり、あるいは僕の経験や年齢では、仕切れない仕事も多い。だったら、組織では満たせないことは、“外”でやろうと。会社と個人活動の両輪で、自分のやりたいことを満たしていこうと考えました。

 とはいえ、これは、誰しもが昔から実践していたことだと思うんですね。会社と、家庭と、趣味の世界、そして町内会と、人はいくつかの居場所を持って、その組み合わせでアイデンティティを構築してきました。ただ、ここ数年は、IT技術が進化し、また、会社員であれば安泰とはいえない時代になるなど時代の変化によって、趣味でやっていたことをビジネスにしたり、社会貢献活動につなげようと考える人が増えてきたのだと思います。

――これまでも「副業」という概念はありました。それと、「2枚目の名刺を持つ」という働き方の違いは何でしょう。

柳内:僕の考えでは、副業の枠組みを拡大したものが、「2枚目の名刺」ですね。これまでの副業は、本業と完全に分けて、あるいは本業に隠れてやるといったイメージが強かったと思うんです。僕が提唱している「2枚目の名刺」は、本業に対して、もう少しオープンなもの。個人活動でNPOをやっていますということを、会社にも堂々と言えるような働き方ですね。まだ道半ばではありますが、副業を認める会社も増えてきて、少しずつ、そうした環境が整ってきていると感じています。

 もう一点、大きな変化があります。本業(会社)と2枚目の名刺(個人活動)が、相乗効果を生むようになってきていることです。個人活動で、事業全体を切り盛りする経験を積むことで、会社では、別部署の人の気持ちがわかるようになった――こういう相互作用が、僕にもありました。あるいは、個人活動で培った人脈を、本業に活かすこともできるでしょう。本業と2枚目の名刺の活動を分離するのではなく、むしろ、積極的に交わっていくことで、双方に良い影響を与えるようになってきています。

 さらにもう一点、目的も、変わりつつあるように思います。

――副業の目的は主にお金だと思うのですが、そうではないのですか。

柳内:サラリーマンの給料が上がりにくい時代において、収入源を複数持つことは、収入をアップさせる道になります。ただ、2枚目の名刺を持つのは、お金のためだけではないと僕は考えています。

 時代が変わり、幸せの定義も変わりつつあります。お金があれば幸せ、では、もうないですよね。2枚目の名刺は、お金を追いかけるのではなく、生きがいを追いかけるもの。生きがいを複数持ち、それを組み合わせることで、自分のやりたいことを実現していく。そういう社会になってきていると感じます。

――最近は、フリーランスやノマドという働き方も注目されるようになっています。2枚目の名刺を持つという働き方は、それらとも違いますね。

柳内:サラリーマンで、安定した収入を持つからこそ、個人活動にチャレンジできる面があると思うんですね。赤字で挑戦してもいいし、失敗したと思ったら撤退できる。いきなり独立・起業をするのではなく、自分の夢をスモールスタートさせて、やりたいことを達成させていく、僕がおすすめしたいのは、そんな新しいライフスタイルです。個人活動がどんどん大きくなって、そちらに集中したくなったら、将来的には独立すればいい。その最初の一歩として、2枚目の名刺を持ちましょうということを言っています。

 就職難が続いていますから、そもそも会社員になるのが大変だ、という声もあると思います。それは問題としてあります。ただ、昨今、フリーランスとかノマドといった言葉が礼賛されすぎて、会社を勢いよくやめちゃって、いま困っている人を、僕も見てきたんですね。だから、いま会社員の人に対しては、その状態でできることから始めてみたらどうか、と、思うんですね。

 2枚目の名刺を持つ働き方は、会社員かフリーランスか、の二択を超えた、いわば「第三の道」です。本業と2枚目の名刺の割合は、0.7対0.3だったり、0.9対0.1だったりと、人それぞれでいいと思う。ゼロかイチかではなく、働き方の選択肢の幅を広げていくことが大事だし、僕がその一つのサンプルになれれば嬉しいと思っています。

【プロフィール】
やなぎうち・けいじ●1980年神奈川県生まれ。東京大学大学院卒。大学院在学中に、サイバーエージェントにてインターネットビジネスの黎明期に携わる。卒業後、民放キー局に入社。エンジニアとして働きながら、勉強会や交流会を主催するなど、複数の名刺を持って、社外でも活動中。バンドや自転車サークルのリーダーも務める。現役サラリーマンの立場から、2枚目の名刺を持つ働き方(パラレルキャリア)の魅力を伝えるための活動を行っている。

関連記事

トピックス

映画『アンダンテ~稲の旋律~』の完成披露試写会に出席した秋本(写真は2009年。Aflo)
秋本奈緒美、15才年下夫と別居も「すごく仲よくやっています」 夫は「もうわざわざ一緒に住むことはないかも」
女性セブン
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
日本初となる薬局で買える大正製薬の内臓脂肪減少薬「アライ」
日本上陸の内臓脂肪減少薬「アライ」 脂肪分解酵素の働きを抑制、摂取した脂肪の約25%が体内に吸収されず、代わりに体内の脂肪を消費
週刊ポスト
専修大サッカー部を辞任していた源平監督(アフロスポーツ)
《「障害者かと思った」と暴言か》専修大サッカー部監督がパワハラ・経理不正疑惑で辞任していた 大学は「警察に相談している」と回答
NEWSポストセブン
日本人パートナーがフランスの有名雑誌『Le Point』で悲痛な告白(写真/アフロ)
【300億円の財産はどうなるのか】アラン・ドロンのお家騒動「子供たちが日本人パートナーを告発」「子供たちは“仲間割れ”」のカオス状態 仏国民は高い関心
女性セブン
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
女性セブン
日本製鉄によるUSスチールの買収計画
【日本製鉄のUSスチール買収問題】バイデンもトランプも否定的だが「選挙中の発言に一喜一憂すべきではない」元経産官僚が読み解く
NEWSポストセブン
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
NEWSポストセブン
バドミントンの大会に出場されていた悠仁さま(写真/宮内庁提供)
《部活動に奮闘》悠仁さま、高校のバドミントン大会にご出場 黒ジャージー、黒スニーカーのスポーティーなお姿
女性セブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
わいせつな行為をしたとして罪に問われた牛見豊被告
《恐怖の第二診察室》心の病を抱える女性の局部に繰り返し異物を挿入、弄び続けたわいせつ精神科医のトンデモ言い分 【横浜地裁で初公判】
NEWSポストセブン