ビジネス

夏のうな丼戦争 すき家が吉野家より有利な理由を専門家解説

 夏バテ防止の代表のメニュー、うなぎが恋しい季節がやってきた。5月28日にいち早く期間限定で「うな丼」を発売するのは、牛丼チェーン「すき家」を展開するゼンショーホールディングスだ。

 すき家といえば、定番の牛丼に加えて「おろしポン酢牛丼」や「高菜明太マヨ牛丼」などトッピングの具材を駆使したり、期間限定で「カレー南蛮牛丼」「やきそば牛丼」といった主食メニュー同士の組み合わせで客単価のアップを狙ったりと、度重なる牛丼の“値下げ戦争”でも企業体力を落とさない商品戦略を探ってきた。

 うな丼も例外ではない。うなぎの養殖に使う稚魚(シラスウナギ)の不漁で蒲焼きの価格が国内外で高騰を続ける中、中国産を使って昨年と同じ価格「並盛り780円」で提供するという。もちろん、うなぎと牛丼が両方味わえる「うな牛」(並盛り880円)での差別化も忘れないあたり、すき家のお家芸は健在といえる。

 ところが、今年のうな丼発売には特別な意気込みが感じられると話すのは、外食産業に詳しいジャーナリストの中村芳平氏だ。

「これまで牛丼の値下げ戦争に積極的に加わってこなかったライバルの『吉野家』が4月に並盛り280円に値下げして、すき家、『松屋』ともに大手3社の価格が横並びになりました。

 ゼンショーの小川(賢太郎)社長は吉野家の値下げについて『影響はまったくない。周回遅れで値下げしてもインパクトはない』と吐き捨てましたが、内心は顧客を奪われるのではないかと少し焦っているはずです。うな丼の発売を早めたのも、固定ファンを囲い込もうとしている表れです」

 吉野家ホールディングスの安部修仁会長は、今回の値下げについて「最後の勝負」と語ったとされるが、それだけ牛丼チェーンを取り巻く環境は以前にも増して不安要素が多い。牛丼3社の2013年3月期の連結経常利益は揃って減益。前期の既存店売上高に至っては、すき家は約8%と、3社の中でもっとも減らしてしまった。

 では、うな丼の先行発売が売り上げ減に歯止めをかける突破口となるのか。

「当然、吉野家も例年うな丼を発売しているので、近々発表はしてくるでしょう。昨年の吉野家のうな丼価格はすき家より130円安い650円。でも、うな丼については価格勝負にはならないでしょう。どちらも中国産を使っているので、より高品質のうなぎを調達しなければ消費者が抱く食の安全が揺らいでしまいますからね」(前出・中村氏)

 すき家のうな丼紹介には次のようなことが書かれてある。

<安全にこだわるすき家のうなぎは、中国の人里離れた山奥のきれいな水で養殖し、水源や飼料、残留薬物の検査まで、日本と中国で計11回の品質検査を経た他に類を見ない安全なうなぎです>

 一方の吉野家も専属契約した中国・江蘇省の養殖地で、池の水質やエサの種類にも目を配ってきた「自慢のうなぎ」を例年提供している。つまり、両社とも「品質や価格は下げずに利幅をがっちり取って儲けるメニュー」(外食コンサルタント)というわけだ。

 それでも、やっぱり気になる牛丼チェーンによる「うな丼戦争」の行方。前出の中村氏は発売のタイミングより、限定期間の後半が勝負だと指摘する。

「いくら冷凍で輸入するとはいえ、うなぎは生物なので夏の期間内に売り切ってしまいたいはず。問題はうなぎが食べたくなる暑い日が少なく、売れ残ってしまった場合にどうするか。値下げして牛丼と同じように叩き合いになるのは避けたいところでしょう。

 そこで、ゼンショーは『なか卯』をはじめ、多くの外食業態を持っていますし、昨年は食品スーパーのマルヤを買収しているので、余ったうなぎを卸すこともできる。在庫管理がしやすい点で『すき家』のほうが有利かもしれませんね」

 うなぎ同様にスタミナ勝負に入った牛丼チェーン。円安による原材料高騰の懸念もある中、どこまで低価格路線を貫くことができるのだろうか。

関連キーワード

関連記事

トピックス

東川千愛礼(ちあら・19)さんの知人らからあがる悲しみの声。安藤陸人容疑者(20)の動機はまだわからないままだ
「『20歳になったらまた会おうね』って約束したのに…」“活発で愛される女性”だった東川千愛礼さんの“変わらぬ人物像”と安藤陸人容疑者の「異変」《豊田市19歳女性殺害》
NEWSポストセブン
児童盗撮で逮捕された森山勇二容疑者(左)と小瀬村史也容疑者(右)
《児童盗撮で逮捕された教師グループ》虚飾の仮面に隠された素顔「両親は教師の真面目な一家」「主犯格は大地主の名家に婿養子」
女性セブン
組織が割れかねない“内紛”の火種(八角理事長)
《白鵬が去って「一強体制」と思いきや…》八角理事長にまさかの落選危機 定年延長案に相撲協会内で反発広がり、理事長選で“クーデター”も
週刊ポスト
ディップがプロバスケットボールチーム・さいたまブロンコスのオーナーに就任
気鋭の企業がプロスポーツ「下部」リーグに続々参入のワケ ディップがB3さいたまブロンコスの新オーナーなった理由を冨田英揮社長は「このチームを育てていきたい」と語る
NEWSポストセブン
たつき諒著『私が見た未来 完全版』と角氏
《7月5日大災害説に気象庁もデマ認定》太陽フレア最大化、ポピ族の隕石予言まで…オカルト研究家が強調する“その日”の冷静な過ごし方「ぜひ、予言が外れる選択肢を残してほしい」
NEWSポストセブン
佐々木希と渡部建
《渡部建の多目的トイレ不倫から5年》佐々木希が乗り越えた“サレ妻と不倫夫の夫婦ゲンカ”、第2子出産を迎えた「妻としての覚悟」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で、あられもない姿をする女性インフルエンサーが現れた(Xより)
《万博会場で赤い下着で迷惑行為か》「セクシーポーズのカンガルー、発見っ」女性インフルエンサーの行為が世界中に発信 協会は「投稿を認識していない」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
《東洋大学に“そんなことある?”を問い合わせた結果》学歴詐称疑惑の田久保眞紀・伊東市長「除籍であることが判明」会見にツッコミ続出〈除籍されたのかわからないの?〉
NEWSポストセブン
愛知県豊田市の19歳女性を殺害したとして逮捕された安藤陸人容疑者(20)
事件の“断末魔”、殴打された痕跡、部屋中に血痕…“自慢の恋人”東川千愛礼さん(19)を襲った安藤陸人容疑者の「強烈な殺意」【豊田市19歳刺殺事件】
NEWSポストセブン
都内の日本料理店から出てきた2人
《交際6年で初2ショット》サッカー日本代表・南野拓実、柳ゆり菜と“もはや夫婦”なカップルコーデ「結婚ブーム」で機運高まる
NEWSポストセブン
無期限の活動休止を発表した国分太一
「こんなロケ弁なんて食べられない」『男子ごはん』出演の国分太一、現場スタッフに伝えた“プロ意識”…若手はヒソヒソ声で「今日の太一さんの機嫌はどう?」
NEWSポストセブン
1993年、第19代クラリオンガールを務めた立河宜子さん
《芸能界を離れて24年ぶりのインタビュー》人気番組『ワンダフル』MCの元タレント立河宜子が明かした現在の仕事、離婚を経て「1日を楽しんで生きていこう」4度の手術を乗り越えた“人生の分岐点”
NEWSポストセブン