ライフ

渋谷のチームは六本木に行きそびれた人々が起源とZEEBRA情報

「渋カジ」から「チーマー」、「コギャル」まで、渋谷の街は常に新しい若者文化の発信地となってきた。1980年代の渋谷の状況について、消費社会とヤンキー文化に詳しい速水健朗氏が振り返る。

 * * *
 1980年代半ば、気取ったDCブランド全盛の時代に、それとは逆を行く、ワイルドな「アメカジ」ファッションできめた「チーム」が登場した。

 この当時の状況をよく知るのは、「東京生まれヒップホップ育ち」でおなじみのラッパーのZEEBRA。中学時代からチーム周辺に出入りしていた彼によると「六本木に行きそびれた」連中が渋谷を占拠し始めてチームが生まれたのだという。

 六本木のディスコのVIPルームで騒ぐリッチでバブルに浮かれた不良たちと、それより少し下の世代とで二分し、後者が渋谷のチームになる。六本木族が乗り回したのは、フェラーリやポルシェだったが、渋谷のチームは、大型の4WDやアメ車を乗り回した。渋谷には当時複数のチームが生まれ、センター街を縄張りとした宇田川警備隊が最大派閥だった。また、この当時のチーム出身で、渋谷でスカウトされた芸能人に東幹久がいる。

 このチームが真似たのは、『アウトサイダー』などのアメリカの青春映画だ。また、西海岸のサーフィン、スケボーなどのストリート文化も参照していた。それ以上に重要なのが、彼らの文化は東京生まれの富裕層の不良文化だったこと。しかも時代は、まさにバブル経済に差し掛かろうという時期だった。

 1990年代頃になるとチームの構成員を指す「チーマー」という言葉が、広く知られるようになる。当時の渋谷センター街には夜になると300人くらいの若者が集まってきたという。渋谷の状況を伝える当時の雑誌には「センター街のスラム化」という投書もあった。この頃から、渋谷は大人が近寄れない街になっていく。

 ちなみにこの頃のチーマーから出世した代表格がテイクアンドギヴ・ニーズの社長・野尻佳孝。野尻は高校時代にチーマーとして活動し、大学生を真似てパーティ券を売ったり、自分たちでデザインした10万円の革ジャンを何百着と売ることで、高校生としては考えられないほどの大金を動かすようになっていた。

●速水健朗/はやみず・けんろう。1973年生まれ。メディア論、都市論など幅広い分野で取材、執筆、編集活動を行なう。主な著書に『ケータイ小説的。──“再ヤンキー化”時代の少女たち』、『都市と消費とディズニーの夢 ショッピングモーライゼーションの時代』。

※週刊ポスト2013年6月28日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁/時事通信)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
運転席に座る広末涼子容疑者
《事故後初の肉声》広末涼子、「ご心配をおかけしました」騒動を音声配信で謝罪 主婦業に励む近況伝える
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
鶴保庸介氏の失言は和歌山選挙区の自民党候補・二階伸康氏にも逆風か
「二階一族を全滅させる戦い」との声も…鶴保庸介氏「運がいいことに能登で地震」発言も攻撃材料になる和歌山選挙区「一族郎党、根こそぎ潰す」戦国時代のような様相に
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン
サークル活動に精を出す悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
《普通の大学生として過ごす等身大の姿》悠仁さまが筑波大キャンパス生活で選んだ“人気ブランドのシューズ”ロゴ入りでも気にせず着用
週刊ポスト